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事例:E-273

スロットルケーブルの摩耗とグリップ内部の抵抗増大により戻りが悪くなったスロットルについて

【整備車両】 
 GSX1300RY (GW71A) "HAYABUSA" 隼 (ハヤブサ) 年式:2000年  参考走行距離:約30,000 km
【不具合の状態】 
 スロットルの戻りが悪い状態でした.
【点検結果】 
 この車両はスロットルの戻りが悪くなったため,メガスピードにて点検整備を実施したものです.今回はFI警告灯も点灯していた ※1 為同時に整備しておきました.

図1.1 青白く変色しているスロットルワイヤアジャスト部
 図1.1 はスロットルワイヤの遊びを調節するアジャスト部の様子ですが,本来黒色のものが青白く退色して全体的にプラスチックがカサカサになっていることが分かります.この状態まで樹脂が劣化すると,アジャスト部が破損するのはそう遠い話ではなく,すでに内部のワイヤの状態も悪化していると考えられます.

図1.2 たるんだチョークワイヤ
 図1.2 はスロルボディの各ワイヤの取り付け部の様子です.黄色の楕円で囲んだ部位はチョークワイヤの取り付け部ですが,少しワイヤがたるんでいて,取り外してもそのまま曲がっていました.これはチョークレバーの操作感が悪化している原因のひとつです.

図1.3 端部の破損したスロットルグリップ
 図1.3 はバーエンド側の破損したスロットルグリップの様子です.樹脂がこの様に破損していれば,内部の状態も悪化していて抵抗が増えている場合が少なくありません.実際にこのスロットルグリップの内側も傷や損傷が多く,かなりの抵抗が発生していたと考えられます.

【整備内容】
 
スロットルグリップおよびスロットルケーブル,チョークケーブルをセットで新品に交換しました.
図2.1 新品のスロットルケーブルおよびチョークケーブル
 図2.1 は新品のスロットルおよびチョークのケーブルの様子です.アジャスタの樹脂部は黒々としていてフレッシュです.そしてケーブル内部のワイヤも曲がっていない為,ケーブルに出し入れしてみると非常にスムーズです.メガスピードではこれを更に滑らかにする処置を施し,車体に組み付けます.

図2.2 スロットルボディに取り付けられた新品の各ワイヤ
 図2.2 はスロットルボディにチョーク及びスロットルの各ワイヤを取り付けた様子です.最適に遊びをアジャストし,それぞれ美しく整然としていることが分かります.

図2.3 新品のスロットルグリップ端部
 図2.3 は新品のスロットルグリップの端部の様子です.この図からも分かりますが,新品のスロットルグリップ内部は非常に滑らかです.

図2.4 新品のスロットルグリップに取り付けられたスロットルワイヤ
 図2.4 は新品のスロットルグリップに新品のスロットルワイヤを取り付けた様子です.これによりスロットル操作にかかわる各部の摩擦力が大幅に減少しました.また同時にスロットル操作に連動して共回りしてしまうハンドルスイッチ ※2 も修理しました.

図2.5 車体に取り付けられたスロットルワイヤアジャスト部
 図2.5 は車体に取り付けられたスロットルケーブルの様子です.アジャスト部がリフレッシュされたことにより,スロットル操作における遊びの微小な変化も調整可能になりました.

図2.6 整然とした各ケーブル
 図2.6 はタンク右側からスロットルボディに向かって整然と取り回されているケーブルの様子です.同時に黄色の楕円で囲んだクランプおよび取り付けボルトをあわせて新品に交換した為,周囲の見た目も非常に美しくなりました.

図2.7 整備の完了したスロットルグリップ廻り
 図2.7 は新品のスロットルグリップを含め,ケーブルやハンドルスイッチ等,スロットルの操作に関わる機関をセットで整備した様子です.これにより節度あるスロットル操作が可能になり,ライディングフィールも良好なものとなりました.また同時に強く握ると回ってしまう左ハンドルのグリップ ※3 も新品に交換しました.

【考察】 
 初期型のハヤブサGSX1300R (GW71A型) はスロットルボディにスロットルワイヤ2本とチョークワイヤ1本の合計3本が取り付けられています.インジェクションモデル黎明期なのでチョークワイヤが備えられていますが,これに関しては滅多に使用するものではなく,やはり要はスロットルワイヤになります.

 この車両は2000年モデルですからすでに発売からかなりの年月が経過しています.したがってスロットルの戻りが悪くなっている車両も多く,実際に同年代の色々なハヤブサのスロットルをひねってみれば,その程度が比較できます.スロットルの引きはある程度は力技でごまかせるとしても,戻りはスプリングの力だけなので小細工が効きません.したがって,戻りが悪くなるとバイクの操作フィーリングも著しく悪化することになります.本来整備されたスロットルは,ひねった手を放した瞬間に「パチンッ」と音を立てて瞬時に戻るものです.スポイルされた状態からその様な整備された状態に戻ると,今まで何をやっていたのだろうと思ってしまうぐらい操作感・フィーリングが良くなります.そしてその軽快なスロットル操作により,バイクがパワーアップしたのではないかと錯覚することも実際に決して少なくないことを付け加えておきます.


※1 イグニションコイル二次側端子の錆による点火不良がもたらすFIインジケータの点灯について
※2 位置決めピンの削除がもたらすスロットル操作時のハンドルスイッチの共回りについて
※3 接着剤の劣化によるハンドルグリップの密着不良について





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