トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 車体関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:131~140)


事例:S-131

接着剤の劣化によるハンドルグリップの密着不良について

【整備車両】 
 GSX1300RY (GW71A) "HAYABUSA" 隼 (ハヤブサ) 年式:2000年  参考走行距離:約30,000 km
【不具合の状態】 
 左ハンドルのグリップを強く握ると回ってしまう状態でした.
【点検結果】 
 エンジンをかけない状態で押し歩きしたり,切り返しをする場合に強くグリップを握ると,グリップがグニッと回ってしまう状態でした.特に夏場はその傾向が著しい為,劣化していたスロットルケーブル ※1 の整備や共回りしていた右ハンドルスイッチ ※2 の修理と同時に左側のハンドルグリップも新品に交換することにしました.
 またFIインジケータランプが点灯していた ※3 為,そちらもあわせて整備しました.

図1.1 グリップの接着状況
 図1.1 はグリップ内部の状態を確かめる為に切り開いた様子です.グリップは簡単に剥がれ,接着剤はもはやボロボロで何も用をなしていない状態でした.

図1.2 取り外したグリップ内側
 図1.2 は取り外したグリップを開いた様子です.黄色の楕円で囲んだ部位にしか接着剤は付着していませんでした.もっともハンドル側にも接着剤が残っている部位もありますが,グリップが空回りしているうちに剥がれた可能性もあります.そうであれば,一旦空回りすれば加速度的にグリップとハンドルの密着力は低下すると考えられます.


【整備内容】
 ハンドルを可能な限り洗浄し,新品のグリップを適切な接着剤で確実に取り付けました.

図2.1 洗浄された左ハンドル
 図2.1 は点検洗浄した左ハンドルの様子です.脱脂も含めて適切な下地を作ることでグリップとの密着を良くします.

図2.2 グリップの取り付け
 図2.2 は新品のグリップを接着剤を介して左ハンドルに取り付けている様子です.グリップとハンドルのクリアランスがほとんどない為,接着剤を付ける部位を計算して取り付ける必要があります.

図2.3 確実に左ハンドルに取り付けられた新品のグリップ
 図2.3 は新品のグリップを取り付けた左ハンドルの様子です.確実に取り付けられたことにより,負荷をかけてもグリップが空回りすることなく正確に車体をコントロールすることが可能になりました.またグリップの見た目も美しく甦り,気持ちの良いものになりました.


【考察】 
 大型バイクは重い為,押し歩きでの移動時にはハンドルにかなり力がかかります.したがってグリップの取り付け状態が甘くなっていると,少しバイクを傾斜させた場合などにはすぐにグリップがグニャリと空回りしてしまいます.特に夏場にその様な状態に陥ることが経験上多いと言え,それは接着剤の問題と温度の問題も関係していると考えられます.
 今回の事例ではスロットルグリップ廻りの整備と一緒に左ハンドルグリップの整備も実施しました.運転するたびに握られる部位なので,部品に対する負荷も同等であると考えても差し支えないと言えます.グリップは使用により模様がすれて消えてきますが,そうなると著しく貧相に見える為,可能な限り避けたい事態です.
 ともすれば,たかがグリップと思えますが,ライダーがバイクを運転する際にはシートと同等にハンドルは重要部位です.二―グリップを除けば,ライダーがバイクに落とされない様につかまっている部位はハンドルしかありません.それゆえ,つかまる部位の状態は常に最良にしておく必要があります.


※1 スロットルケーブルの摩耗とグリップ内部の抵抗増大により戻りが悪くなったスロットルについて
※2 位置決めピンの削除がもたらすスロットル操作時のハンドルスイッチの共回りについて
※3 イグニションコイル二次側端子の錆による点火不良がもたらすFIインジケータの点灯について





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