【整備内容】
スロットルワイヤはグリップ側がオイルポンプとキャブレータの合計5本を引く為,
使用により個々の内部抵抗が少し増えても,トータルではスロットルグリップの捻りが重くなります.
今回の事例では破損した樹脂部の状態や各部からおそらく発売当時のものであると推測され,
この機会に新品に交換しました.
図2.1 新品のスロットルワイヤ及びスロットルグリップ |
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図2.1は新品のスロットルワイヤを新品のスロットルグリップに取り付けた様子です.
やはりスロットルワイヤが消耗する頃はグリップも同等に経年劣化しているといえ,
部品が樹脂であることから同時に交換されることが望ましいといえます.
図2,2 特殊強化スプリング(下)と取り外した古いスプリング |
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図2.2はスロットルワイヤリターンスプリングで,特殊強化スプリング(下)と取り外した古いスプリングを比較した様子です.
ピストンバルブ式のキャブレータの場合,
スロットルグリップの戻りはピストンバルブに取り付けるリターンスプリングに一存されます.
オイルポンプレバーのリターンスプリングの力も無視することはできませんが,
やはりピストンバルブのリターンスプリングを主眼に捉える必要があります.
スロットルワイヤとスロットルグリップに合わせてリターンスプリングも同時に新品に交換しておきたい部品であるものの,
すでに純正部品が絶版であることから,メガスピードでは特殊強化スプリングを使用しています.
このスプリングを装着した場合,非常にスロットルグリップの戻りが鋭くなり,
純正ではとても味わえない俊敏なレスポンスが約束されます.
特殊強化スプリングと純正スプリングの比較は表1の通りです.
a |
取り外した純正スプリング |
特殊強化スプリング |
左巻き |
左巻き |
巻き方向 |
巻き数 |
13 |
17 |
自由長 |
100mm |
100mm |
線径 |
0,68mm |
0,80mm |
外径 |
15,0mm |
14,7mm |
ピッチ |
8,72mm |
5,75mm |
表1.1 純正スプリングと特殊強化スプリングの比較 |
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表1.1において,薄い赤で示したセルの数値は純正に対して特殊強化スプリングの変更点です.
自由長は同じで巻き数が約1,3倍になることにより,ピッチが35%縮まっています.
また外径がわずかに小さくなるものの,線径が約1,2倍になることにより,強力なバネ力を発揮していることが分かります.
この強いバネ力により,スロットルの鋭い戻りを実現します.
材質やバネレートは内部機密情報により非公表とさせていただきますが,
非常に優れた性能を示していることは,実際に走行すれば一目瞭然です.
図2.3 スロットルバルブに取り付けられた特殊強化スプリング |
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図2.3は特殊強化スプリングに新品のリングを取り付けスロットルバルブに組み付けた様子です.
スプリングの抜け止めとしてのリングも経年により劣化していた為,同時に新品に交換することにより信頼性を向上させ,
実際にキャブレータに取り付け鋭いスロットルレスポンスが得られたことを確認して整備を完了しました. |