事例:D‐20
位置決めピンの抜けによるハンドルスイッチの共回りについて |
【整備車両】
RG400EW‐W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) Ⅰ型 年式:1986年 参考走行距離:約12,200km |
【不具合の状態】
スロットル操作においていきなり全開にする様な大きな動作をするとハンドルスイッチが共回りしてしまう状態でした. |
【点検結果】
この車両はクラッチカバーからオイル漏れが発生していたり ※1 ,ウォータポンプからオイル漏れが発生していたり ※2 ,
スロットルワイヤが破損していたり ※3 ,リヤブレーキスイッチの配線が熔損していたり ※4 と様々な不具合が発生しており,
それらを改善すべくメガスピードにて整備を承ったものです.
ここではスロットル操作時にハンドルスイッチが共回りしてしまう不具合について記載します.
図1.1 ハンドルスイッチ外部に飛び出している位置決めピン |
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図1.1はスロットル操作時に共回りするハンドルスイッチの様子です.
原因は位置決めピンが外れていることによるものであると瞬時に診断することができます.
またスイッチ固定ねじ下側の頭が著しくナメており,取り外しが非常に困難であることが推測されます.
図1.2はハンドルスイッチを取り外し,内側を確認した様子です.
外側からも分かる様に,本来飛び出ているはずの位置決めピンがハンドル取り付け部と面一になるまで,
押し込められてしまっていることが確認できます.
これは位置決めピンの入るべき穴に取り付けられず,ハンドルの穴の空いていない部位に無理やり取り付けられた結果,
ピンが奥に押し込められたものであると判断することができます.
図1.3 完全にナメているハンドルスイッチ固定ねじの頭 |
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図1.3は完全に頭のなめているハンドルスイッチ下側固定ねじの様子です.
締め付けと緩めの両方向にナメていることがわかります.
特にハンドルスイッチ下側は位置的に狭く,ナメている上に固着しているねじの抜き取りは困難を伴いますが,
メガスピードの技術をもって,どこにも損傷を与えずに抜き取りに成功しております.
図1.4は取り外したハンドルスイッチ固定ねじの様子です.
本来同じ長さのはずが,なぜか下側が長いねじに交換されていました.
下のねじが大きくナメていることが分かります.
またナメことによる金属のメクレ具合から,下側のねじは強いトルクをかけてナメていることが分かり,
これはねじが固着していたことをうかがわせます.
すなわち過去に作業した者が,ねじを取り外す際にナメた可能性が極めて高く,
最終的に取り外すことができずにあきらめてしまった産物であるといえます. |
【整備内容】
スロットルグリップ操作時のハンドルスイッチの共回りは,その位置決めピンが外れていたことによるものであり,
まずピンの位置を正確に圧入し直し,完全にナメたねじを新品に交換する運びになりました.
図2.1は位置決めピンを正規の飛び出し寸法に圧入し直した様子です.
これにより,ハンドルの位置決め溝にピンが嵌められスイッチが固定されます.
図2.2はトルクドライバにて上下のねじを均一且つ適正な締め付けを行っている様子です.
この部分は材質が樹脂であることから,ボルトのねじ径に対する標準締め付けトルクでは締め過ぎになることから,
材料に見合ったトルクで正確に締め付けなければなりません.
図2.3は正確にハンドルに取り付けられたハンドルスイッチの様子です.
位置決めピンが確実に嵌め込まれていることにより,ハードなスロットル操作の際にもハンドルスイッチが共回りせず,
正常な操作による快適な走行が可能になりました. |
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