トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:251~260)


事例:E-257

ガスケットの経年劣化による排気バルブカバーからの排気漏れについて

【整備車両】 
 RG400EW (HK31A) RG400Γ(ガンマ)  年式:1985年  参考走行距離:8,900 km
【不具合の状態】 
 1番シリンダ排気バルブカバーから排気漏れが発生していました.
【点検結果】 
 この車両は一年ほど前に不動に陥ったまま保管されていたということで,メガスピードにて再生のご依頼を承ったものです.ロータリーバルブカバーが破損していた ※1 り,キャブレータに2サイクルエンジンオイルが混入していた ※2 り,スロットルバルブが開きっぱなし ※3 だったり,1番および2番シリンダと排気管の付け根から排気漏れが発生していた ※4 りと様々な不具合が見られましたが,今回の事例では排気漏れについて記載します.

図1.1 排気漏れしている1番シリンダ排気バルブカバー
 図1.1は排気漏れの発生している1番シリンダの排気バルブカバーを開けた様子です.ガスケットのゴム部分が完全につぶれて張りがなくなっていることや,経年劣化で紙の部分の密封性能も低下した結果漏れが発生したと考えられます.


【整備内容】
 接合面を研磨してガスケットを新品に交換し,更に漏れ対策を施しました.

図2.1 洗浄研磨された接合面
 図2.1はシリンダ側の排気バルブカバー接合面の様子です.洗浄・研磨して可能な限り接触面をフラットな状態にしました.

図2.2 新品の排気バルブカバーガスケット
 図2.2は新品の排気バルブカバーのガスケットの様子です.Oリング状のゴムが純正で接着されており,使用すれば完全に潰してしまうため,再使用はできません.

図2.3 整備の完了した排気バルブカバー
 図2.3は新品のスクリュを使用して規定トルクで締め付けた排気バルブカバーの様子です.今回はプラスアルファで上乗せする形で更に排気漏れ対策を施しました.

図2.4 点検洗浄したマウントラバーハウジング
 図2.4は整備完了後約200km程試運転を実施してから点検した排気バルブカバーの様子です.赤色の四角で囲んだAの部位が排気バルブカバーとシリンダの合わせ面ですが,全く排気漏れが発生していないことを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 2サイクルエンジンが成熟期に入る頃,各社ともに排気バルブを採用しています.その駆動方式や制御に差異が見られるものの,どれも排気ポート周囲に設けられており,構造上外部と接続部があります.RG500/400Γの場合,すべてのシリンダに排気バルブのカバーが取り付けられていて,そこはガスケット等で密封されていて外部に排気ガスが漏れないようになっています.しかし発売から数十年経過すればその密封性能も低下し,排気漏れしている個体が少なくありません.
 特に2サイクルエンジンでは排気漏れが発生すると,同時にドロドロしたドス黒いオイルの燃えカスが垂れてくる為,非常に汚らしくなります.ですので排気漏れが発生した場合は速やかに修復することが望ましいと言えます.
 今回の事例では漏れに対して新品のガスケットおよび新品のボルトを使用し,接触面を研磨した上で更に漏れ止めを施しました.工程は多くなりますが,最低限このレベルまで確実に抑えて正確に整備しないと排気漏れはすぐに再発します.
 やはり『漏れ』を確実におさえるのであれば,小手先だけの修理ではなく,きちんと段階を踏んだ整備が求められ,2サイクルエンジンの絶版中古車がどんどん値上がりしている状況を考慮すれば今後更にその傾向は強くなるはずです.


※1 ロータリーバルブカバー裏地の剥離による吸気口遮蔽がもたらす燃焼不良について
※2 キャブレータの燃料オーバーフローホースから出た2ストオイルについて
※3 全開で固定されたスロットルバルブによるエンジン始動不能について
※4 ボルトの締め付け不良によるエキゾーストチャンバ付け根からの排気漏れについて





Copyright © MEGA-speed. All rights reserved.