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事例:E-255

キャブレータの燃料オーバーフローホースから出た2ストオイルについて

【整備車両】 
 RG400EW (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 1型  年式:1985年  参考走行距離:約8,900km
【不具合の状態】 
 エンジン始動不能,本来ガソリンが出るはずのオーバーフローホースから2サイクルエンジンオイルが垂れていました.
【点検結果】 
 この車両はお客様が保管中にエンジンが不動になり,その一年後にメガスピードにて再生を承ったものです.不動や不調の原因として,1番ロータリーバルブカバーの破損 ※13番スロットルバルブの開きっぱなし ※2 等様々な不具合が同時に発生していました.今回の事例ではオイルチェックバルブの衰損による1番キャブレータの不具合について記載します.

図1.1 オーバーフローホースから漏れ出す2サイクルエンジンオイル
 図1.1はメガスピードにて車両をお預かりした日に確認した不具合です.キャブレータフロートチャンバのオーバーフローホースから緑色の粘りのある液体が漏れ出していました.これは2サイクルエンジンオイルである可能性が高く,その場合フロートチャンバやキャブレータが2サイクルエンジンオイルで満タンになっていることを意味しています.

図1.2 1番キャブレータから流れ出した2サイクルエンジンオイル
 図1.2はエアパイプを取り外した様子です.やはりキャブレータ内外に2サイクルエンジンオイルが溜まっていて,パイプを外した瞬間にオイルがあふれ出しました.

図1.3 メインエアジェットから流れ出した2サイクルエンジンオイル
 図1.3はメインエアジェットから2サイクルエンジンオイルがあふれ出している様子です.何度拭き取ってもあふれ出てくることから完全にオイルチェックバルブが衰損していると考えらえます.

図1.4 2サイクルエンジンオイルで満たされたキャブレータ内部
 図1.4は状況を保存する為に現場を汚染しない様に取り外したキャブレータ内部の様子です.やはり懸念通り内部は2サイクルエンジンオイルが溜まっていました.

図1.5 2サイクルエンジンオイルの満タンになったフロートチャンバ
 図1.5はフロートチャンバの様子です.本来あるべきガソリンが完全に2サイクルエンジンオイルに置換されていました.これがエンジン始動不能の大きな原因の1つであると判断することができます.

図1.6 衰損しているオイルチェックバルブ
 図1.6は衰損していると考えられるオイルチェックバルブをストレート加工する為にニップルを外した様子です.

図1.7 衰損しているオイルチェックバルブ
 図1.7は取り外したオイルチェックバルブの様子です.目視では分かりませんが,チェックボールとシートの接触面に問題が発生していると推測されます.


【整備内容】
 新品のオーバーサイズのオイルチェックバルブニップルを取り付けると同時にキャブレータをオーバーホールしました.

図2.1 洗浄されたオイルチェックバルブハウジング
 図2.1はオイルチェックバルブハウジングを洗浄した様子です.異物や詰まり等を可能な限りなくし清潔な状態にします.


図2.2 新品のオーバーサイズのニップル
 図2.2は新品のオーバーサイズのオイルチェックバルブニップルの様子です.これにより材質の粘りと耐久性,抜けにくさが確保されます.

図2.3 圧入されたオーバーサイズのオイルチェックバルブニップル
 図2.3は新品のオーバーサイズのオイルチェックバルブニップルをキャブレータに圧入した様子です.

図2.4 洗浄研磨されたボデー側のオイルチェックバルブ出口
 図2.4はスロットルバルブカバーを外し,内側からオイルチェックバルブ出口を洗浄・研磨した様子です.この部位は通常手が入りにくく整備されることが皆無ですが,当社ではカバーを外し可能な限り良い状態に再生させます.

図2.5 新品のオイルチェックバルブおよびオイルホース
 図2.5は1番キャブレータに新品のオイルホースおよびオイルチェックバルブを取り付けた様子です.これで2サイクルエンジンオイルがむやみにキャブレータ内部に流れ込むことを防止することができました.1か所がダメになっていれば残りの3か所もダメになっている,あるいはダメになる可能性が非常に高いことから,今回の整備で4気筒すべてのオイルチェックバルブに対策を施しました.

図2.6 オーバーホールの完了した1番および3番キャブレータ
 図2.6はオーバーホールの完了した1番および3番キャブレータの様子です.この後試運転を実施し,ロータリーバルブカバーの破損が判明した為,改めてキャブレータを外して整備し,再度試運転を行い,良好であることを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 1985年の発売から時を経て21世紀になり,RG400Γの不具合にオイルチェックバルブの衰損が多くみられるようになりました.当社の実験結果から,オイルポンプの当たり所が悪いと一日で約10mlのオイルがキャブレータに流れ続けることが分かっています.そうなるとエンジン始動は困難になり,キャブレータ本体の分解整備が必要になります.
 構造上やむを得ないとは言え,漏れが始まったら抜本的に修理しておかないと,始動困難あるいは燃焼不良といった不具合に悩まされ続けることになります.したがって,今回の事例でもそうですが,不具合の発生している個所以外にも,4気筒分しっかり整備しておくことがストレスのないバイクライフにつながると言えます.


※1 ロータリーバルブカバー裏地の剥離による吸気口遮蔽がもたらす燃焼不良について
※2 全開で固定されたスロットルバルブによるエンジン始動不能について





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