トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:191~200)


事例:E-193

吹き返した混合気等によるキャブレータボデーとスロットルバルブガイドカバー間の汚染について


【整備車両】

 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型  推定年式:1983年  参考実走行距離:約9,200km


【不具合の状態】

 エンジンがスムーズに吹け上がらない回転域が存在する状態でした.


【点検結果】

 この車両はお客様のご依頼により,エンジンの吹け上がりに引っ掛かりのある回転数が存在する
※1 ということで,

メガスピードにて修理を承ったものです.

今回の事例では,キャブレータの全体的なオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)を実施した際の,

本体ボデーについて記載します.



図1.1 エンジン内部圧縮圧力の測定

 図1.1は取り外したキャブレータの様子です.


エアベントホースのホルダプレートが上下逆についていた ※2
り,

ドレンボルトがなめて固着していた ※3
り,

フロートチャンバの取り付けスクリュからガソリンが漏れていた ※4
り,

燃料ホースとそのクリップが不適切な物になっていました
※5




図1.2 取り外した腐敗臭のするキャブレータ

 図1.2はキャブレータボデーからスロットルバルブガイドカバーを取り外した様子です.

この部分のガスケットは通常純正部品で品番設定されていないことから,新品では入手することができない為,

またトルクスで締め付けられていることからも,ほぼすべての車両が発売の1983年から一度も手入れされていないといえ,

この様に吹き返した混合気やゴミ,2サイクルエンジンオイルといった汚れが堆積しています.



図1.3 取り外した腐敗臭のするキャブレータ

 図1.3は
スロットルバルブガイドカバーのガスケットを除去した様子です.

カバー本体にはエアスクリュやスタータの大気取り入れ口といった重要な役割があり,

カバーを取り外して裏側までその状態を点検整備しなければならないことは当然ですが,

ボデー側にもそれと同じ通路がつながっている為,

この部位を確認する為にはガイドを外す作業が必須になります.



【整備内容】

 キャブレータボデーを洗浄してアルミニウムの材質がしっかり確認できる状態にしました.

その上で各部に異常がないかを点検することで万全を期す為に慎重に整備を進めました.



図2.1 点検洗浄されたスロットルバルブハウジング

 図2.1は点検洗浄されたキャブレータボデーのスロットルバルブハウジングの様子です.

スロットルバルブカバーとの接触面はもちろんのこと,左右のガイドも取り外し,可能な限り完全に近い形で洗浄しました.

この部位が確実に点検洗浄されなければ,

RG250Γのキャブレータを本当の意味でオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)したとは言えません.

なぜなら発売が1983年ということを考えれば,数十年この部分が確認されず,

不具合を内在している可能性が否定できないからです.



図2.2 新品のVM28専用ガスケット

 図2.2は
新品のVM28専用に作られたガスケットの様子です.

厚み,耐ガソリン性,シール性,そのすべてを十分に満たしてこそ意味があり,

メガスピードではそれを使用することにより,一層本来の性能を回復させることができます.



図2.3 オーバーホール【overhaul】の完了したキャブレータ

 図2.2は
オーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)の完了したキャブレータの様子です.

実際に試運転を重ね,不具合がすべて解消されたことを確認して整備を完了しました.

外観が非常に美しくなったことが分かります.

キャブレータは常に美しくなければならないのです.



考察】

 オーバーホールとは“分解して精密に検査すること”にあり,掃除とは差異があります.

例えばRG250Γ(GJ21A/21B) に使用されているVM28であれば,

もしそれに対してオーバーホールという語句を使用するのであれば,

スロットルバルブハウジングまで限りなく洗浄し,その上で亀裂の有無等基本事項を点検し,

更には正しいトルクで組み立てるといった工程を最低限実施しなければなりません.

それが行われていない為に,フロートチャンバの締め付けねじからガソリンが漏れだしたり,

フロートチャンバの取り付けスクリュ雌ねじ溝をねじ切ってしまったり
※6 ,様々な不具合が発生するのです.

すなわち未熟な作業が行われたことにより発生する人為的なミス,

そしてそれが原因で不具合が発生してしまうという,

修理したはずが実際には逆に壊しているという本末転倒ともいえる現象が,

巷のいたるところで発生していると言っても過言ではありません.


 メガスピードでは上記の理由から,VM28に関しては可能な限り完全完璧を目標に洗浄して組み立てています.

それは完成されたキャブレータの美しさを見れば説明するよりも明らかであり,

引き出された本来の性能は,乗ってみればすぐに分かります.


 中古で購入したバイクの調子がイマイチだと思う時,その直感は決して誤ったものではありません.

ですから,もしそう感じたのであれば,それに精通している整備技術者に相談することです.

避けるべきは,性能が発揮されていない中古車に乗っていて,

こんなものだろうと勝手に解釈して納得して自己完結してしまうこと,すなわち車両を正しく評価できていないことです.

挙句の果てに持病だの何だのと言い始めてしまっては,オーナーも不幸ですし,そう評価された車両も哀れです.

そうならない為にも,特に古い車両は一度全体的に正しくリフレッシュしておくことが求められるのです.





※1 吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて

※2 逆さまに付けられ更にねじられたエアベントホースガイドプレートについて

※3 腐敗したガソリンと錆の発生によるドレンボルトの固着となめた頭について

※4 フロートチャンバ取り付けスクリュの締め付けトルク不足によるガソリン漏れについて

※5 内径の大き過ぎる燃料ホース及び細いクリップによるガソリン漏れの危険性について

※6 フロートチャンバ取り付けねじ溝のねじ切り破損について






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