事例:E-179
逆さまに付けられ更にねじられたエアベントホースガイドプレートについて |
【整備車両】
RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型 推定年式:1983年 参考実走行距離:約9,200km |
【不具合の状態】
エンジンの吹け上がりが悪い回転数が存在する状態でした. |
【点検結果】
この車両は吹け上がりの悪い回転数が存在し,それを直すべくメガスピードにて整備を承ったものです.
今回の事例では,キャブレータオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)を実施した際に気になった,
エアベントホース取り付けガイドプレートの不具合について記載します.
図1.1はねじれた状態で上下逆さまに取り付けられているプレートの様子です.
ホースを取り付ける際にねじれたのか,ねじれたままキャブレータに取り付けられたのかは分かりませんが,
いづれにしろ上下逆さまなのは問題であり,見ているだけでも気分を害します.
図1.2は状態が分かり易い様にねじれているガイドプレートを拡大した様子です.
図1.3はねじれているプレートをキャブレータ下側から見た様子です.
フロートチャンバに共締めしているスクリュからガソリンがにじみ出ている ※1 ことが分かります.
これはスクリュの締め付けトルクが完全に不足していたものです.
図1.4は取り外したガイドプレートの様子です.
プレートが歪められていることからホース取り付け穴も歪んでおり,
周囲はフロートチャンバ取り付けスクリュからにじみ出た腐敗したガソリンで汚染され,
リブも一部が潰れている状態でした. |
【整備内容】
取り外したプレートを修正して洗浄すれば再使用も可能ですが,
部品代を考えればわずかな投資で美しい新品が入手できるため,迷わず交換しました.
図2.1は新品のエアベントホースガイドプレートの様子です.
新品は平らであり,リブの形状にも歪みはありません.
また錆が一切ない状態になったことも見逃してはなりません.
図2.2 オーバーホール【overhaul】の完了したキャブレータ |
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図2.2はオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)の完了したキャブレータの様子です.
取り付けられた新品のプレートはフロートチャンバと共に規定トルクで締め付けました.
各部が極めて美しい状態に蘇っていることが確認できます.
図2.4はエンジンに組み付けられたキャブレータの様子です.
正常に取り付けられたプレートに収まるエアベントホースのパイピングの美しさはもちろんのこと,
キャブレータ本体のみならず,細かな部品や各部が綺麗に蘇ることで,
性能はもとより,非常にさっぱりとした機械的な美しさを体感することができるようになりました.
大変残念なことですが,この事例のようにキャブレータボデーがガソリンで茶色くなっている,
あるいはパイロットスクリュやドレンボルト等から茶色い液体が浸み出している状態にもかかわらず,
それをオーバーホールしたと称されるキャブレータを多々見受けますが,
少なくともオーバーホール【overhaul】という語句を使用するのであれば,
最低限このキャブレータの様に美しく仕上がっていなければならないと考えますし,私だったらそれを期待します.
したがって,メガスピードでは特にVM28の様な各部から噴き出たガソリンで汚染されている,
大変見苦しいキャブレータに関しては尚一層美しく仕上げるように心がけているのです. |
【考察】
キャブレータはバイクの部品の中でも機能的に非常に大切な役割をになっていますが,
実は機能的な側面だけでなく,見た目の美しさも重要な要素であることが少なくありません.
ネイキッドモデルはもちろんですが,この車両の様にサイドカウルがあってもその後方から見えるようなモデルでは,
やはりチラ見した時の印象が大切です.
また,例えフルカウルで完全に見えなくなってしまう車両だとしても,
カウルを取り外した時に薄汚いキャブレータが出てきたのではがっかりしてしまいます.
今回の事例ではエアベントホースのガイドプレートがねじれていただけでなく,
リブの方向が上下逆さまに取り付けられていました.
メガスピードに持ち込まれる直前に他店でキャブレータの脱着とフロートチャンバの脱着が行われている経緯があり,
フロートチャンバはプレートと共締めなので,どう考えても異常に気付かないはずがないのです.
面倒だから見なかったことにして,そのままおかしな状態で組んでしまったのかもしれませんし,
あるいは本気で気付かなかったのかもしれません.
そもそも,そんなところまで見る料金はもらっていないと言い出すかもしれません.
はたまた業者によっては,“細かいこと気にするなよ”なんて罵倒される恐れもあります.
ではメガスピードではどうするのか.
当然気付いたところはすべて是正します.
何かの縁があって私のところに来たものですし,ここで最後になれば良いのです.
だいたい整備を承る古いバイクはこのような箇所が毎回しかも絶対に10箇所程度は見つかります.
“何もなくて良かったぁ”などという楽なことはありません.
発売から20年も30年も経っていて何もないわけがないのです.
ですので,それを見越してすべてを含めて見積もりを出すために,それなりの料金になるわけです.
そして,細かい部位までやる一番の理由は,私がバイクに関して神経質であり,
自分のバイクは正しい状態で美しく乗り続けたいと願うのと同じく,
お客様のバイクもできるだけ正しく綺麗な状態でお渡ししたいと願うからです.
だから膨大な時間と労力をかけてもキャブレータをここまで細かく点検し美しくしておくエネルギーが湧くのです.
ここで話を元に戻しますが,中古車ではエアベントホースすら脱落してなくなっているものも多数存在します.
それに気づいていないケースも少なくありません.
しかし機能的にも本来のあるべき姿に戻してやることが必須であるのは言うまでもないことなのです.
※1 フロートチャンバ取り付けスクリュの締め付けトルク不足によるガソリン漏れについて
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