【点検結果】
この車両はお客様のご依頼によりメガスピードにて定期点検を実施したものです.
プラグキャップを取り外してスパークプラグを確認したところ,
すべてのプラグ座面付近に砂利や枯葉等が堆積しているのが確認できました.
図1.1 枯葉と砂利の堆積している3番及び4番シリンダスパークプラグ |
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図1.1は3番及び4番シリンダのスパークプラグの様子です.
すべてのプラグ座面に砂利が堆積していましたが,特に3番はそれ以外に虫や枯葉が積もっていました.
図1.2 砂利が噛み込んでいる1番シリンダスパークプラグ座面付近 |
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図1.2は1番シリンダのスパークプラグ座面付近の様子です.
目視できる範囲で砂利が複数噛み込んでいるのが確認できました.
このままではプラグを取り外した時にエンジン内部に砂利が落下してバルブとシートのすき間に挟まり,
著しいエンジンの圧縮低下を引き起こす原因になります ※1 .
したがって,まず表面付近に見える砂利やゴミ等を除去しました.
図1.3 1番シリンダのプラグねじ溝に噛み込んでいる砂利 |
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図1.3は砂利等を除去しながらプラグを3回転程度回した様子です.
表面だけでなく,上からは目視できない境界にあった砂利が,プラグを回転させることにより脱落してねじ溝に挟まった為,
それらを取り除きながら慎重にプラグを取り外しました.
図1.4はエンジン内部に異物を脱落させることなく適切にプラグが取り除かれたプラグホールの様子です.
完全に周囲の異物を取り除くことにより,次にプラグを取り付ける際に座面に挟み込む心配をなくし,
またエンジン内部に脱落させる危険性も除去しました.
図1.5 固着した2番シリンダスパークプラグの取り外し |
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図1.5は2番シリンダのプラグを取り外す際に,初期トルクに異常な手応えを感じたことからプラグが固着していると判断し,
かかるトルクと破損の危険性との釣り合いを見計らいながらプラグを取り外している様子です.
最大トルクは約22N-mと,正規の締め付けの2倍の数値になっていました.
図1.6 強固に固着している3番シリンダスパークプラグの取り外し |
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図1.6は2番シリンダと同様に異常な手応えを感じたことからプラグが固着していると判断し,
検査用トルクレンチを使用して現在の数値を見ながら抜き取っている様子です.
3番シリンダが一番強烈に固着しており,最大トルクは約40N-mと,正規の4倍程度のトルクが必要でした.
2番シリンダはギリギリにしても,4番シリンダは完全にプラグあるいはシリンダヘッドが破損するレベルのトルク ※2 です.
締め付けにおけるオーバートルクの概算数値すなわちどれくらいでプラグやヘッドが破損するかについては,
私自身すでに実験や経験,検証等により知識や手応えあるいは抽象化した技術として肉体化していた為,
今回の事例におけるプラグの固着はオーバートルクによる締め付けではなく,
環境が固着させたものであると判断することができますが,
手応えや検査用トルクレンチの表示とのにらみ合いにおいて,
どの段階までトルクをかけるかは,その一切が整備技術者の判断に委ねられ,
このレベルでの固着に対する取り外しは非常に技術を要し,
判断を誤れば瞬時にしてエンジン破損に至る難しい作業であるといえます.
それではどのくらいのトルクでプラグあるいはシリンダヘッドが破損するのか,今回改めて実験検証を行った ※2 ので,
あわせてご覧下さい.
図1.7は強固に固着していたスパークプラグの様子です.
左から1番シリンダ,2番,3番,4番となり,特に2番と4番が強固に固着していました.
プラグの焼け具合に関しては,距離等から算出しても妥当であるといえますが,
2輪用のプラグの交換推奨走行距離が約3,000~5,000kmとメーカーで指定していることと比較すれば,
すでに4,5倍は過走行であるといえ,今回の定期点検においてはその燃焼状態の確認だけでなく,
新品に交換する為にも,正確な取り外しが求められました. |