トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:141~150)


事例:E-143

旗艦モデルとされるエンジンのスパークプラグの締め付け不良について


【整備車両】

 GSX1300RY (GW71A) "HAYABUSA" 隼 (ハヤブサ)  年式:2000年  参考走行距離:約22,400km


【不具合の状態】

 スパークプラグの締め付けトルクが不足していました.


【点検結果】

 この車両は大手量販店で長年整備されていたというものですが,

メガスピードにてエンジンの圧縮圧力を測定する為に3番シリンダのスパークプラグを取り外そうとしたところ,

手応えが全くない為,即座に締め付けトルク不足であると判断し,

他の気筒のスパークプラグの締め付け状態を検査用トルクレンチにて確認点検しました.



図1.1 締め付けトルクの検査

 図1.1は検査用トルクレンチを使用して1番シリンダスパークプラグの締め付けトルクを検査している様子です.

戻しトルク法で測定した結果,表示トルクが約5.2N‐m,補正値で約6.5N‐mしか締め付けられていませんでした.

これでは振動によりスパークプラグが緩んだ場合,ねじ溝にすき間ができ,振動による運動でねじ溝に損傷をきたし,

ねじ溝を破損させる可能性があります.



【整備内容】

 プラグホールの状態及びシリンダヘッド側のねじ溝が損傷していないことを確認して,

規定トルクにて新品のスパークプラグを正確に取り付けました.



図2.1 正規のトルクで締め付けられたスパークプラグ

 図2.1は正規の締め付けトルクでスパークプラグを取り付けた様子です.

約12N-mの締め付けトルクにて確実に取り付けました.



【考察】

 スパークプラグの締め付けトルクはM10の場合,約10N-m~12N-m程度とされています.

取り外したプラグの締め付けは補正値で約6,5N-mと正規の半分程度の締め付けになっていました.

仮にも175psを絞り出すシリンダの燃焼圧力を密封しているプラグの締め付けがいい加減であることは,

振動によるねじ溝の破損だけでなく,乗っていても気分的に良いものではありません.

プラグに対する整備性はエアクリーナの取り外しといった工程を含めても概して一般的なアクセス方法であるといえ,

CBR250シリーズに見られるエンジン型式:MC14Eの様に困難
※1 でないことから,

今回の締め付け不良は単純に作業者の怠慢あるいは技術不足であるといえます.


 GW71Aの場合,イグニションコイルとプラグキャップが一体化されている為,

プラグホールに取り付ける際にはかなりの摩擦力が働きます.

したがって万が一プラグが緩んでも,吹き飛ぶ可能性は低いといえますが,

少なくともメーカーの旗艦とされるモデルに乗るのであれば,

走行中にプラグが外れたなどという情けない事態は極力避けたいものです.

その為にも,やはりスパークプラグという点火系統では最も重要な部品の締め付けには正確なトルク管理が求められます.






※1 “スパークプラグの締め付け不良とエンジン型式MC14Eのプラグホールについて”






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