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事例:E-215

不適切な長さにより勾配の緩くなった燃料ホースについて

【整備車両】 
 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1987年  参考走行距離:約23,500km
【不具合の状態】 
 1番,3番シリンダの燃焼不良により加速状態が悪化している状態でした.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードで不具合の整備を承る直前に他店で整備されたものですが,各部に不具合が見られた為,それぞれについて整備し直しました.ここでは1番キャブレータと3番キャブレータを連結する燃料ホースについて記載します.

図1.1 勾配が緩やかになっている燃料ホース
 図1.1は長過ぎてロータカバーの側面に垂れかかっている燃料ホースの様子です.ホースが長過ぎることにより擦れ防止のスプリングがホース上部まで行かずに途中で終わっていることが分かります.この状態では非常にだらしないだけでなく,勾配が緩やかになる為,3番キャブレータから1番キャブレータに供給する燃料の流量に対する抵抗になり兼ねません.また黄色の楕円で囲んだ部分のSIPCホースが最後まで差し込まれていない ※1 ことも分かります.そして赤色の円で囲んだ部分のオイルホースクリップが反転して取り付けられている ※2 ことも確認できます.

 各部の整備不良から推測すれば,おそらく適当にホースが取り付けられたと考えられますが,例えばもしドレンボルトに工具が入るスペースを確保したい為に長さを延長してその空間を確保する意図があるとすれば,それは設計を無視した誤った,作業者本位であると言えるのは,ホースの勾配が緩くなる程度から見ても明らかです.その様な小細工は本来必要ないのです.


【整備内容】
 新品の燃料ホースを指定された長さに調整して交換しました.また経年により劣化していたスプリングを新品に交換しました.

図2.1 適切な長さの新品の燃料ホース
 図2.1は新品の燃料ホースを指定された長さに調整して取り付けた様子です.図1.1と比較して燃料ホースの勾配がきつくなっていることが分かります.これにより適正な燃料の流量が確保されました.また擦れ防止のスプリングも,ホースを裸にする部分を作ることなく,ちょうど良く取り付けられていることが分かります.


【考察】 
 燃料ポンプの無い自然落下式の燃料ホースで一番大切なのは勾配角度です.特に2スト400ccというエンジンであれば,1気筒100ccに見合った燃料供給が必要になる為,特にその流量に注意する必要があります.
しかし過去にこれより更に滑稽と言える程極端に不適切な長さの燃料ホースが使用されていた事例
※3 もありました.少なくとも発売当時にメーカーが燃料ホースの長さを指定していることから,余程の事がない限りはそれに従ってホースを調整すべきであり,それを確認せずに無駄に長い燃料ホースを取り付けることは,燃料の供給性能の面からだけでなく外観を損ねることになることから極力避けねばなりません.
 燃料ホースは長過ぎれば弛んで勾配が緩くなり,逆に短か過ぎれば常に引っ張られてテンションがかかっている為何かの拍子に抜けて燃料漏れを発生させる可能性があります.やはりブリーザホース等と違って,燃料ホースは可能な限り適正とされる長さに調整しなければならないと言えます.


※1 差し込みの不適切なSIPCホースについて
※2 反転して取り付けられたオイルホースクリップについて
※3 不適切な長さにより垂れ下がった燃料ホースについて 





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