事例:S‐51
完全にナメたスタビライザ取り付けボルトによるフロントフォークの脱着不能について |
【整備車両】
RG250EW‐2 (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) Ⅱ型 推定年式:1984年 参考走行距離:約22,300km |
【不具合の状態】
スタビライザ取り付けねじの六角部が完全にナメている上,固着していてフロントフォークの取り外しができない状態でした. |
【点検結果】
この車両は個人売買で取得されたお客様から,
サスペンションがグニャグニャしているという症状を改善してほしいというご依頼を承り,
ANDF廻りの整備 ※1 及びその際に発見した組み立て組み付けの誤ったフロントフォーク ※2 をオーバーホールしたものです.
整備に際し,フロントフォークを取り外す時にスタビライザを外す必要がありますが,
取り付けねじは4か所すべてがナメており,
特に右後方のねじは頭が完全にナメていて通常の六角ではどんなに養生しても空回りしてしまう状態でした.
図1.1 完全にナメていて六角レンチの使用できないボルト |
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図1.1は完全に頭のナメているボルトの様子です.
それと同時に固着していた為,尚一層抜き取りが困難な状態でした.
通常の六角に対応する工具では取り外しが不可能であった為,
メガスピード独自の抜き取り技術を駆使して周囲を一切傷つけることなくボルトを抜き取ることに成功しました.
図1.2 新品の六角ボルト(左)と取り外したナメているボルトの比較 |
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図1.2は新品の六角ボルトと取り外したナメているボルトを比較した様子です.
フォークの組み立て組み付けがメチャクチャであることから,
同一人物が未熟な素人整備をした際にナメたものであると考えられますが,
一般的にスタビライザ特に後方はナメた場合に抜き取りが困難になる為,
その様な事態は可能な限り避けなければなりません.
ボルトの傘が傷ついていることから,何らかの外力により取り外されようとした可能性があります.
またナメたことにより放置された結果,ボルトが固着する ※3 のは今回の事例のみならず,
特に古い車両であれば頻繁に見かける整備ミスが原因の不具合であるといえます.
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【整備内容】
抜き取ったボルトはナメの状態が著しいことから再使用は不可能と判断し,
それも含めて4か所すべて新品に交換することで対応しました.
図2.1 スタビライザに取り付けられた新品の六角ボルト |
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図2.1は新品に交換された右後ろのスタビライザ取り付けボルトの様子です.
性能の回復はもちろんのこと,洗浄された周囲や,ボルトの美しい輝きも相まって,
気持ち良く車両を所有することができるようになりました.
図2.2 新品のボルトで取り付けられたスタビライザ廻り |
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図2.2は新品のボルトで固定されたスタビライザ廻りの様子です.
黄色の四角で囲んだAの部分が著しくナメていた部位です.
今回の整備ではフォークのANDFやアウターチューブ内部も同時に整備を行い,
性能の回復された足廻りで再び走り出せるようになりました. |
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