【考察】
古いバイクの整備で大変な作業は何かと問われた場合,清掃洗浄に関しては,まず腐ったキャブレータの洗浄と,やはり同じく腐食したキャリパの洗浄を挙げます.今回の事例ではキャリパを取り上げましたが,腐食して固形化したブレーキフルードやパッドの削れカスはキャリパにまとわりつくため,見た目以上に洗浄作業が困難です.しかし細部まで完全に洗浄しなければ,望み通りの性能を回復させることはできません.
メガスピードでキャリパの洗浄を実施する場合,必ずミラーでハウジングの裏側を確認します.それは一見綺麗になったと思われるハウジングの裏にはビッシリ汚物が貼り付いている場合が多いからです.気の遠くなる作業ですが,手でひとつずつゴミを取り除かなければなりません.またキャリパ本体の組み方も,マニュアル通り,額面通りでは望み通りの性能を引き出すことができず,フニャフニャしたフィーリングになります.それが誤ってエア抜きが完全にできていないと勘違いされているケースが多々あるのは残念であり憂慮すべきです.いくらエア抜きしてもフニャフニャしたのが直らないのはこの為です.もちろん当社の仕上がりはカチッとしっかりしたものになりますが,構造が単純なのに組み方で非常に差が出る為,ブレーキとは奥深いものだと改めて実感します.
今回の事例では7年程度乗らずに保管されていたことも考慮しなければなりませんが,そもそも発売が1985年の年代ものですから,例え乗り続けていたとしても,どこかで一度リフレッシュしなければなりません.ガソリンも腐ってガム質化し悪さをしますが,ブレーキフルードも同様です.固形化して各部の動きを著しく悪くします.したがって,ブレーキは生ものであり,定期的に手入れが必要な部位であると認識しておく必要があります. |
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