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事例:E-261

著しく硬化したリングによる密封性能低下とエアパイプの再度取り付け困難について

【整備車両】 
 RG500EW (HM31A) RG500Γ(ガンマ) 1型  年式:1985年  参考走行距離: ―
【不具合の状態】 
 キャブレータとエアパイプをつなぐゴムのリングが極端に硬化していてエアパイプが著しくキャブレータに接続しづらい状態でした.また硬化による密封性能低下により,エアフィルターを通さない空気を吸い込んでいた可能性がありました.
【点検結果】 
 この車両は長期保管中にエンジンがかからなくなり,メガスピードにて再生のご依頼を承ったものです.オイルチェックバルブが衰損していたり,エアフィルタが劣化していたり ※1 ,様々な不具合が発生していましたが,今回の事例では極度に硬化したリングについて記載します.

図1.1 2ストエンジンオイルがあふれ出ているキャブレータ
 図1.1はエアパイプを取り外した1番キャブレータの様子です.2ストオイルがあふれ出てくる状態でした.またリングが著しく固着・硬化していて,キャブレータから取り外すのが非常に困難な状態でした.

図1.2 極度に硬化しているリング
 図1.2は困難ながらもキャブレータから取り外したリングの様子です.指に力を入れても全く変形しないくらい硬化していました.柔軟性が全くない状態なのでエアパイプとの接合部を密封する性能が不十分になり,不具合の原因になります.


【整備内容】
 硬化していたリングを新品に交換し,同時にクランプも新品に交換しました.

2.1 柔軟性のある新品のリング
 図2.1は新品のリングを指で押した様子です.新品はフレッシュで柔らかい為,指で押せば容易に変形する柔軟性を持っています.これなら経年により歪んだエアパイプに追従することが可能です.

図2.2 キャブレータに取り付けられた新品のリングおよびクランプ
 図2.2は新品のリングを整備の完了したキャブレータに取り付けた様子です.硬化した古いリングをもがきながら取り外したことが嘘の様に,フレッシュなリングは力を入れずとも,むしろリングからキャブレータに吸い込まれるようにピタッと装着できます
 また同時にクランプも新品に交換することにより,見た目も美しくなりました.

図2.3 キャブレータに取り付けられたエアパイプ
 図2.3は新品のリングが取り付けられたキャブレータにエアパイプを接続した様子です.リングが新品になり柔らかくなったことにより,エアパイプの取り付けが格段にスムーズになりました.またエアパイプとキャブレータの密封性能が回復し,新品になったエアフィルターを介したフレッシュな空気のみをエンジンに取り込めるようになりました.


【考察】 
 RG500/400Γのエアパイプは経年により歪んでいるものが少なくありません.したがってキャブレータとの接続部であるゴムのリングが変形することにより,両者の密封を保持しています.しかし今回の事例に見られるように当時もののリングは極度に硬化している為,一度取り外すと,位相が合っていても歪みが残る為,エアパイプがキャブレータにはまらないという事態に陥ることが少なくありません.
 リングの本来の役目はエアパイプとキャブレータを密封し,フィルターを通した空気のみ吸入できるようにすることですが,発売から何十年も経過した車両においては,キャブレータにエアパイプを取り付ける為の,いわば緩衝材としての機能が非常に重要であるのは,一度歪んだエアパイプの脱着を体験してみれば,容易に理解できることです.
 リングは単なるゴムですが,メガスピードでキャブレータの整備を承る場合は必ず交換します.そして同時にクランプも新品にすることにより,その光沢が出来上がりの見栄えをより良いものに演出してくれます.


※1 経年劣化するエアフィルタと部品をストックする難しさについて





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