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事例:S-116

見苦しく配管されたフロントブレーキホースの見直しについて

【整備車両】   
 
RG500EW (HM31A) RG500Γ(ガンマ) 1型  年式:1985年  参考走行距離: ―
【不具合の状態】 
 フロントブレーキキャリパに引きずりが発生していました.
【点検結果】 
 この車両はお客様が7年程度乗らずに保管している際に不動に陥った為,メガスピードにて再生のご依頼を承ったものです.フロントタイヤに引きずりが発生していた為点検すると,キャリパの不具合によるものであることが分かりました.ここではその引きずりに関連して整備したフロントブレーキホースについて記載します.

図1.1 左右に開いたバンジョーアダプタ
 図1.1 はマスターシリンダに取り付けられていたバンジョーアダプタの様子です.左右に湾曲して取り付けられていました.見苦しい外観であることに加え,石像の様なバンジョーボルトおよびブリーダも一層外観を台無しにしている印象を受けます.不具合の要素が一つでも残ることを避ける為,今回はキャリパ,ホース,マスターシリンダの3点セットで整備しましたが,ホースについてはこの様な見苦しさを避ける為に,取り回しや形状にも気を配りました.

図1.2 左右に開いたバンジョーアダプタ
 図1.2 はライダーの視点から見たブレーキホース付け根の様子です.左右へ開脚しているのはどうみてもスマートではありませんし,バンジョーボルトも同様です.ライダーがバイクを運転する際には必ず視界に入る部位ですから,やはり美しい状態にしておきたいものです.

図1.3 クランプ留めされたホース
 図1.3 はロアブラケット周辺のブレーキホースの様子です.純正では三又を介して3本のブレーキホースで構成されているブレーキラインですが,この車両は三又およびホーンがロアブラケットに存在せず,マスターシリンダから2本出しになっていました.したがってホースがバラけるのを避ける為にクランプで縛り付けたと考えられます.

図1.4 純正キャリパアダプタおよびフレアナットに差し込まれた社外ホース
 図1.4 はキャリパ側のブレーキホース接続部の様子です.アダプタとフレアナットは純正が使われて,その上が社外のホースという非常に中途半端な状態でした.過去の作業者がどのような意図でこうしてしまったのかは分かりませんが,外観は見苦しい為,いち早く是正される必要があります.また材質面からすれば,アルミ合金のキャリパに鉄のアダプタおよびフレアナットが取り付けられ,それにアルミ合金が接続されているので統一性に欠ける状態でした.


【整備内容】
 マスターシリンダ,ブレーキホースを社外の新品に交換し,キャリパをオーバーホールしました.

図2.1 新品のSWAGE-LINE
 図2.1 は新品のPLOTのブレーキホース構成部品の様子です.これにより美しい配管を実現しました.

図2.2 187型端子に変更されたブレーキスイッチ
 図2.2 はNISINのマスターシリンダに交換した為,純正のブレーキスイッチは使用できないことから,車体側の配線を加工して187型端子に変更し,取り付けた様子です.端子がスイッチ外部で入りと出に分かれている為,純正のブレーキスイッチよりも動作に正確性・信頼性があると言えます.それは散々純正フロントブレーキスイッチの不具合に直面し,修理を実践してきた経緯から明確です.

図2.3 美しく配管されたバンジョーアダプタおよびホース
 図2.3 は新品のマスターシリンダにバンジョーアダプタおよびボルト,ホースを取り付けた様子です.2本出しの場合でも図の様にきちんとそろえることで非常に美しい外観をつくることが可能です.

図2.4 ホースセパレータで保持されたブレーキホース
 図2.4 は新品のホースセパレータを使用して左右のブレーキホースを保持した様子です.ホースが新品になるのであれば,セパレータを使用して美しい外観を保ちたいものです.

図2.5 キャリパに接続された新品のキャリパアダプタおよびブレーキホース
 図2.5 はオーバーホールの完了したキャリパにアダプタおよびホースを取り付けた様子です.図1.4 の状態と比較すればもはや説明は必要ない程,美しい状態に生まれ変わったことが分かります.
 ブレーキはもちろん性能が第一です.しかしそれと同様に,バイクの場合は四輪と違いホースが丸見えになるのでその見た目の美しさにも気を配らなければならない部位であると言えるのは,この事例からも容易に理解することができるはずです.この車両も当社に入庫した段階では外観がスポイルされていましたが,この様に美しく生まれ変わり,乗るだけでなく眺める楽しみもまた増えました.


【考察】 
 ブレーキに不具合が発生していた場合,マスターシリンダ,ホース,キャリパという3つの部位に分けて考えることができます.しかし発売から何十年も経過した車両の場合,全部を同時に整備しておかないと,不具合が解消しきれない場合が少なくありません.したがってメガスピードで修理を承る場合は,必ず全個所セットで実施します.特に純正のブレーキホースは製造年月日が記載されていますから,キャリパをオーバーホールしたとしても,数十年経過したホースを再使用するのはナンセンスです.
 今回の事例では見苦しく配管された社外のホースについて取り上げましたが,取り付けに際してトルクレンチも使わずに素人整備された滅茶苦茶な取り回しの車両をよく見かけます.そのたびに可哀相に思いますが,ブレーキこそ安全にかかわる重要部位であり,知識と技術が求められる部位です.単純に見える部位ですが,実はその奥は非常に深く,特にこの車両に採用されているデカピストンは一癖ある為,出来栄えに差が出ます.性能を取り戻すことも大切ですが,その仕上がりや外観の美しさにも十分配慮しなければならないのは,この事例のホースを見比べても明らかです.


 





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