事例:E-165
スロットルワイヤケーブルリンク部の破損により重くなったスロットル操作について |
【整備車両】
RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型 年式:1987年 実走行距離:約1,200km |
【不具合の状態】
スロットルの引きが重く,戻りも渋い為エンジンレスポンスの低下が懸念される状態でした. |
【点検結果】
この車両はエンジン始動不能に陥っていた為,メガスピードにて整備を実施したものです.
オーナーが乗らなくなってから10年間保管されていたものですが,
発売が1987年頃であることから,各所整備が必要な状態でした.
スロットルの引きが重く,戻りが悪い状態になっており,ハンドルスイッチの破損等も見受けられました ※1 が,
今回の事例では,重くなっていたスロットルケーブルについて記載します.
図1.1は取り外したスロットルワイヤケーブルのハンドルスイッチ側の様子です.
本来黒であるアジャスタ部分が劣化により青白く変色してい手触りもカサカサしていることが分かります.
黒色の樹脂部品は直射日光に照射されている時間が多い程この傾向を示しますが,
この様に変色している場合は素材そのものが劣化により極端に脆くなっており,
場合によっては触れただけで破損することが少なくありません.
図1.2はスロットルバルブ側のワイヤの様子です.
四半世紀の間同じ形状で固定されたことにより,ワイヤそのものに角度がついてしまい,
ケーブル内部との摩擦抵抗が増大していると考えられ,
これが引き及び特に戻りの悪さに影響しているといえます.
図1.3はハンドルスイッチ側のケーブルとスロットルバルブ側のケーブルがリンクする部位の様子です.
黒矢印で示したAの部分が破損していることによりハンドルスイッチ側のケーブルに逃げが生じ,
エネルギーの無駄な消費により意図した動作が行われない大きな原因のひとつであるといえます.
メガスピードで整備を実施するRG500/400Γにおいてこの部位が破損していることが多く,
材質が樹脂であることからも,可能な限りリフレッシュしておきたい箇所であるといえます. |
【整備内容】
連結する樹脂部分が破損していることから,例え各部をグリスアップしたとしても満足な結果は得られないと判断し,
スロットルケーブルAssyを新品に交換しました.
図2.1は新品のスロットルケーブルリンク部の様子です.
ワイヤの受けが新品に交換されたことにより無駄のない正確な力の伝達が可能になります.
図2.2は新品のスロットルワイヤケーブルアジャスト部の様子です.
新品はこの様に黒色であり,樹脂部がしっかりしていることから正確なアジャスト及び保持が可能になります.
図2.3は新品のスロットルバルブ側のワイヤの様子です.
元々は直線で美しく構成されており,内部の摩擦が低い状態で出荷されます.
ですが実はこれだけでは十分なレスポンスを得ることができたとは言えません.
確かに純正のスロットルワイヤリターンスプリングを使用しても設計者の意図したレスポンスを得ることは可能です.
しかし更に節度あるレスポンスを求めるのであれば,純正の設計されたレートでは不十分であるといえ,
メガスピードでは独自に選定した特殊強化スプリングにより,極めて鋭いスロットル操作感をものにする ※2
ことが可能であり,特に専用に選定した潤滑材を塗布することで更なる相乗効果を得ることができます. |
【考察】
例え走行距離が1,200km程度でも,25年以上経過すれば樹脂部は劣化により脆くなり,
紫外線の影響を受けている部位においては触れただけで破損してしまう場合が少なくありません.
この事例においてスロットルワイヤケーブルは車体内部に位置している部分が破損していた為,
ハンドルスイッチ側の様に目立つ日焼けはありませんでしたが,力のかかる部分であり,
経年劣化による強度低下は避けられません.
今回の整備ではスロットルワイヤと同時にリターンスプリングを特殊なものに変更し,
専用に選定された潤滑材を塗布することで,純正とは比べ物にならないほど鋭いスロットルワークが可能になりました.
特にRG500/400Γの様にスロットルグリップの操作で5本のワイヤをひかなければならない構造であれば,
各ワイヤの内部抵抗がわずかに増えるだけでも,それらが合計されれば大きな摩擦力になり,
スロットル操作のレスポンスは極端に悪化します.
やはりリターンスプリングも含めた包括的な整備が求められるといえ,
少なくともスクウェア4という稀有な車両に乗るのであれば,ストレスなく運転したいものです.
それ故メガスピードでは操作感の要といえるワイヤ類に関しては特に点検整備をお勧めしています.
適正な整備を受けることにより今までとは全く異なるフィーリングが得られる場合が少なくないのは,
概して古い車両において顕著であり,それだけの投資をする価値は十二分にあると断言できるのです.
※1 “位置決めピンの折れ込みによるハンドルスイッチの共回りについて”
※2 “スロットルケーブル保持部の破損や経年劣化により重くなったスロットルグリップについて”
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