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事例:D‐31

位置決めピンの折れ込みによるハンドルスイッチの共回りについて


【整備車両】

 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1987年  実走行距離:約1,200km


【不具合の状態】

スロットル操作においていきなり全開にする様な大きな動作をするとハンドルスイッチが共回りしてしまう状態でした.


【点検結果】

 
この車両はお客様の長期保管により不動に至り,メガスピードにて再生のご依頼を承ったものです.

ここではスロットル操作時にハンドルスイッチが共回りしてしまう不具合について記載します.



図1.1 ハンドルに折れ込んでいるハンドルスイッチ回り止めピン

 図1.1はハンドルにハンドルスイッチの位置決め固定ピンが折れ込んでいる様子です.

Aの矢印で示したものがハンドル側に折れ込んだ固定ピンで,

本来Bの矢印の部分でハンドルスイッチと一体成形されていたものです.

ハンドルスイッチ側の切断面がちょうどハンドル外径に掬い取られたように滑らかに削れていました.

これによりハンドルがスロットル操作時に定位置で停止することなく,

負荷に対して耐え切れずにハンドル軸上を動いていたと判断することができます.


 原因としては,走行距離が実走で約1,200km程度であることから,使用による疲労とは考えにくく,

かと言って,経年劣化による樹脂材質の脆弱化であるするにはその周囲の材質の状態との比較から無理があります.

切断面がハンドルにそった形状で極めて滑らかであり,鋭利なもので一度に切り取られた印象を受けますが,

ハンドルスイッチ側の突起を刃物で削るには周囲が狭過ぎる為現実的ではありません.

ですが切り取ったものが刃物ではなく,ハンドル側の穴のエッジであれば説明がつきます.

切り取られた断面や穴に落下している樹脂の断面を観察するとその可能性がかなり高いといえ,

その場合,装着状態で無理にハンドルスイッチを回すという人的行為以外に考え難く,

過去に修理した業者が何らかの整備ミスを起こしていた可能性を否定することができません.

あるいは強引なスロットル操作によりハンドルスイッチ固定部が破損した可能性も無きにしも非ずですが,

お客様からの過去の運転状況等の問診から判断すれば,その可能性は“0”であるといえます.

それはこの車両がお客様のワンオーナーであり,走行距離が1,200km程度しかないということからも裏付けられます.


 どちらにしても,このままでは意図した通りのスロットルワークを行えず,

せっかくのRG400Γという趣味性の強い車両に乗る楽しみが激減してしまう為,この状態を改善する必要があります.




【整備内容】

 スロットルグリップ操作時のハンドルスイッチの共回りは,スロットル操作のフィーリングを著しく低下させる為,

症状の改善が必要となりますが,すでにRG400Γ (HK31A) 2型のハンドルスイッチは絶版であることから,

新品交換以外の方法での対応が求められました.



図2.1 加工形成されたハンドルスイッチ固定ピン

 図2.1は正規の回り止め穴と同寸法に加工した金属製の固定ピンをハンドルスイッチに埋め込み加工を行った様子です.

アルミニウム合金のハンドル側は回り止めの穴に損傷もなく状態が良いこと等を考慮し,

ハンドルスイッチ側を加工して対応しました.

見た目も非常に美しくまとまっていることが分かります.

やはり,やるからには美しくなければなりません.

もちろん金属で製作した固定ピンですから,通用の使用で破損することは有り得ず,

元の樹脂の位置固定ピンより耐久性の強化が図られています.

これにより新品に交換されたスロットルワイヤ及び強化リターンスプリングと相まって,

非常に良好なスロットルレスポンスを得ることができました.



【考察】

 年式の古い車両の場合,経年や使用による樹脂の劣化等により,

樹脂材料であるハンドルスイッチの回り止めピンが破損していることが少なくありません.

その場合に新品の供給があればベストですが,

ハンドルスイッチが破損する頃には多くのケースで部品も絶版になっています.

そうなると,中古部品を使用する,あるいは他車種のスイッチを流用する,

または修理する,という選択肢の中から手法を考えなければなりません.

今回の事例ではハンドルスイッチ及び金属を加工して修理するという手法で対応しました.

“部品がないから修理できない”

可能な限りそのフレーズを使用しない為に,そして最大限お客様のご要望にお応えできるよう,

メガスピードでは日々研究を重ねてまいります.





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