事例:E-169
シフトシャフトオイルシールリップ部の亀裂及び衰損によるオイル漏れについて |
【整備車両】
CB250RS (MC02) 推定年式:1981年 参考走行距離:約15,000km |
【不具合の状態】
エンジン停止の静止状態においてシフトシャフトオイルシール部から床にオイルが垂れ続けていました. |
【点検結果】
この車両は各部の分解整備のご依頼をメガスピードにて承ったものです.
車両をお預かりしている間にオイル漏れが発生した為,修理を実施しました.
シフトシャフトオイルシール部は,発売から20年以上経過している車両ではエンジン停止の静止状態で,
オイル漏れが発生しやすい ※1 場所の1つであるといえます.
図1.1はオイル漏れの発生しているシフトシャフト部の様子です.
一日で床に小さなオイル溜まりができるほど,静止状態にてオイルが漏れ出していました.
図1.2 リップ部に亀裂が発生しているオイルシール |
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図1.2はオイル漏れの発生していたオイルシールを取り外した様子です.
シールのリップ部に亀裂が発生している上,上下ともにリップに張りがなくなっていることが分かります.
これによりシールの密封性能が低下していた為,オイル漏れに至ったものであると推測されます.
図1.3はオイルシールのリップが接触していた部分がわずかに摩耗している様子です.
大きく段付き摩耗している場合は肉盛溶射等により修正しなければなりません ※2 が,
表面がわずかに削れて変色している程度であり,触診で判断できるほどの大きな段付きは発生していませんでした. |
【整備内容】
オイルシールを新品に交換し,それに対応するハウジング及びシャフトの状態を整えることで整備を進めました.
図2.1は点検洗浄したオイルシールハウジングの様子です.
目立つ破損や損傷等は発生しておらず,新品のオイルシール外側との十分な密封性能が期待できます.
図2.2はハウジングに圧入された新品のオイルシールの様子です.
取り外した古いものと比較すれば,リップ部に盛り上がりがあり,且つ張りがあることが分かります.
図2.3はわずかに摩耗していたリップの接触部を平滑に研磨した様子です.
これにより新品のオイルシールの密封性能が十分に発揮されるようになりました.
図2.4 オイル漏れの解消されたシフトシャフトオイルシール部 |
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図2.4は修理の完了したシフトシャフトオイルシール周囲の様子です.
エンジンオイルを規定量入れオイル漏れが発生していないことを確認して整備を完了しました. |
【考察】
今回の事例では,お客様の車両をお預かりしている間にオイル漏れが発生したものです.
確かに気温が高くなってオイルが柔らかくなり漏れやすさに拍車をかけたことを否定することはできませんが,
シールの限界性能を超える時期を読むのは難しく,特に中古で入手したものであれば尚更です.
しかし発売が1981年頃であることを考えれば,一度も整備されていない箇所であれば30年以上経過しているものであり,
特にシール部に関してはいつ漏れ始めてもおかしくないと考えるのが自然です.
今回の症状としてはエンジン停止の静止状態において一日で床に小さなオイル溜まりが発生する程度に漏れていた為,
当然エンジンをかければ高温になったオイルは更に漏れ出す量が増えることは想像に難くなく,
修理しなければ乗って帰ることは難しい状態でした.
たまたま修理可能な環境で発生した不具合であったことは幸いでしたが,遠方まで旅行に行った時に発生すれば,
最低でもオイルを継ぎ足しながら乗らなければエンジンが焼き付く恐れがあり,
特にそれが僻地や山中では入手することが難しくなります.
やはりその様な事態に陥らない為にも,特に発売から20年以上経過している車両に関しては,
すべての消耗品が寿命であると頭に入れておいた方が間違いないといえ,
可能であれば不具合が発生する前に予防的整備を実施しておくことが望ましいといえます.
※1 “段付き摩耗したシフトシャフトと劣化したオイルシールからのミッションオイル漏れについて”
※2 “肉盛溶射によるインペラ軸摩耗の修正について”
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