トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:121~130)


事例:125

オイルシールの衰損によるキックペダル付け根からのオイルにじみについて


【整備車両】

 K125S (コレダ S10)  推定年式:1995~2000年  参考走行距離:約23,100km


【不具合の状態】

 キックペダルシャフト部のオイルシールからオイル漏れが発生している形跡がありました.


【点検結果】

 この車両は走行中にシフト機構がロックしてしまい
※1 ,その修理をメガスピードにて承ったものです.

外観目視点検を実施している時にキックペダルのオイルシール付近からオイル漏れが発生した形跡が確認されました.



図1.1 オイル漏れの発生した形跡のあるキックペダル取り付け部

 図1.1はキックペダル付け根の様子です.

埃や土に付着したオイルが塊になって周囲を汚染していることが分かります.

滴る状態には至っていないものの,近い将来大幅に漏れだす量が増える可能性がある為,

変速不能となったシフトリンケージの不具合
の修理と並行して,修理を実施しました.



【整備内容】

 シフトリンケージの修理工程でクラッチカバーを取り外した為,キックペダルシャフトの摩耗状況の点検を実施しました.



図2.1 修正研磨されたキックペダルシャフト

 図2.1はスプラインを洗浄し,オイルシール取り付け部を極わずかに研磨したシャフトの様子です.

オイルシールとの接触部の状態が良好であったことから,

オイル漏れの発生原因は,オイルシールの劣化・衰損であると判断することができます.



図2.2 点検洗浄したオイルシールハウジングと,新品のキックペダルシャフトオイルシール

 図2.2はクラッチカバーのオイルシールハウジングを点検洗浄し,新品のオイルシールを取り付けている様子です.

ハウジングの状態は極めて良好であることから,オイル漏れの発生部はシャフトとシールの接触部であると推測されます.



図2.3 圧入されたオイルシールに取り付けられたキックシャフト

 図2.3はクラッチカバーに圧入したオイルシールに,キックペダルシャフトを取り付けた様子です.

キックペダルシャフト側は固定されている為,実際にはキックペダルシャフトにクラッチカバーを取り付ける形になります.



図2.4 オイル漏れの解消したキックペダル取り付け部

 図2.4は破損していたキックペダル ※2 を新品に交換してシャフトに取り付け試運転を行った様子です.

キックペダルの操作がスムーズにでき,オイル漏れが解消されたことを確認して整備を完了しました.



考察】

 この車両は走行中にギヤの変速ができなくなり,メガスピードにて修理を承ったものです.

その際にキックペダル付け根からオイル漏れの形跡が発見された為,

シフトリンケージの整備上クラッチカバーを取り外す必要があることから同時に整備を実施しました.


 今回の事例ではシャフトやハウジングに大きな不具合が見られなかったことから,

オイル漏れの発生原因はオイルシールの衰損によるものであると判断することができます.

製造年式を考えればオイル漏れが発生してもおかしくない時期であり,

漏れる量が少ないうちに修理しておくことは非常に有効であるといえます.


 キックシャフトのオイル漏れの修理を実施する為には,

クラッチカバーを外してシャフトの状態等も合わせて点検する必要がある為,

その際にはクラッチ廻りも同時に分解整備しておくことが好ましく,

逆に今回のシフトリンケージの整備の様にクラッチカバーを外す必要がある場合は,

同時にクラッチカバーに付属されている消耗品を交換しておくことが,車両を長持ちさせる秘訣になります.





※1 “シフトシャフトリターンスプリングの折損によるシフトロックがもたらす変速不能について”

※2 “無理なねじ込みによるキックペダルスプラインの破損について”






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