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事例:E‐90

オイルシールの衰損及びシャフトの摩耗によるキックペダル付け根からのオイル漏れについて


【整備車両】

RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) Ⅰ型  推定年式:1983年  参考走行距離:約19,000km


【不具合の状態】

エンジンをかけて走行すると,キックペダルのシャフトとオイルシールの接触部からオイルが漏れてきました.


【点検結果】

図1.1 キックペダル付け根付近から漏れ出しているミッションオイル

 
図1,1は5km程試運転を行った段階で,

キックペダルシャフトオイルシール付近から漏れ出しているミッションオイルの様子です.

静止状態でオイルが漏れ出さなかったのは,

ミッションオイルの油面がエンジン停止状態ではオイルレベルビス付近である為であると考えられます.



図1,2 オイルシール取り付け部の摩耗しているキックシャフト

 図1,2はキックシャフトのオイルシール接触面が摩耗している様子です.

シャフトの摩耗は表面のごくわずかな程度であり,

オイル漏れの原因はオイルシールの衰損によるものであると判断できます.


【整備内容】

オイル漏れの原因と考えられるオイルシールを新品に交換すると同時に,キックシャフトの摩耗を修正研磨しました.



図2.1 修正研磨されてキックシャフト

 図2,1は摩耗したキックシャフトの表面を修正研磨した様子です.

これにより,オイルシールとの接触部からのオイル漏れが発生する状況を極力回避しました.



図2.2 クラッチハウジングに取り付けられた新品のオイルシール

 図2,2はクラッチカバーに新品のキックペダルオイルシールを圧入した様子です.

クラッチカバーは亀裂からミッションオイル漏れが発生していた為すでに新品に交換したことにより
※1

ハウジングの状態も良く,高いミッションオイルのシール性能が期待できます.



図2.3 オイル漏れの解消したキックペダル

 図2.3はクラッチカバーをエンジンに組み付け,キックペダルを取り付けた様子です.

試運転を行い,オイル漏れが解消したことを確認して整備を完了しました.



【考察】

 キックペダルシャフトとオイルシールのすき間からミッションオイルが漏れ出す事例は少なくありません.

当該車両の発売が1983年ということを考えれば,

摩耗や損傷よりもむしろ部品材質そのものの劣化が原因であることが多いといえます.

エンジン停止状態においてはキックペダルの位置よりミッションオイルの油面が低い為,オイル漏れは発生しません.

しかしひとたびエンジンをかければ,内部のオイルが掻きあげられ,各部に飛散し,

キックペダルの付け根からのオイル漏れを引き起こします.

今回の事例ではオイルシールの衰損のみならず,キックシャフトとオイルシールの接触部が偏摩耗していたことも,

ミッションオイルの漏れた原因であると考えられます.

キックシャフトのオイルシールは確かに,外部から引き抜き圧入することにより交換できます.

しかしそれではシールを取り外しても,シャフトとハウジングのすき間が狭過ぎて手が入らず,

キックシャフトの修正はおろか,点検すら十分にできない場合が少なくありません.

やはり確実にオイル漏れを修理するにはクラッチカバーを取り外し,

シャフトの状態を点検し,必要に応じて修正研磨をおこなうことが求められるといえ,

もし摩耗が限度以上に進んでいれば,


肉盛溶射によるシャフト修正
※2 等も視野に入れた包括的な整備が求められるといえます.





※1 
“転倒によるクラッチカバーの破損がもたらすミッションオイル漏れについて”

※2 
“肉盛溶射による軸の摩耗の修正について”






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