取り付けの極めて不適切なコック接続部の燃料ホースについて |
【整備車両】
RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型 年式:1987年 参考走行距離:約23,500km |
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【不具合の状態】
燃料ホースの取り付けが不適切でした.またコックOFFの状態でガソリン漏れが発生していました. |
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【点検結果】
この車両は他店で購入された直後にメガスピードにて不具合の修理を承ったものです.先方でキャブレータのオーバーホールを実施したということですが,状況や主要部の点検結果から不十分であると判断し,当社で細部までオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)し直しました.
今回の事例では不適切な取り付けがされていた燃料コックの燃料ホースについてとりあげます. |
図1.1は燃料コックからキャブレータに接続されている燃料ホースの様子です.SIPCホースの取り付け不良 ※1 やオイルホースの取り付け不良 ※2 と同様に,このホースも最後まできちんと差し込まれていない状態でした.また本来あるべきはずのクリップが無く,画像右側のホースにホースバンドが付けられていて,左側は裸のままでした.
取り付けの不具合と同時に燃料コックOFFの状態でガソリン漏れが発生していた為,コックを新品に交換する段取りにしました. |
図1.2はOFFの状態でガソリン漏れを発生していた燃料コックを取り外した様子です.両側とも奥までホースが差し込まれていませんが,特にホースバンドが取り付けられている側の差し込みが極めて不適切であると言えます.なぜホースバンドを使用しなければならなかったのか.そしてなぜ逆側はクリップが付いていないのか.また,なぜホースバンドを使用している側のホースの差し込みがバンドなしの側よりいい加減なのか.謎は深まるばかりですが,少なくともホースバンドを使用したということは,ガソリン漏れが発生していた可能性があります.しかしホースバンドを使用して強力に締め付けるのであれば,その前にホースを根元まで差し込むべきであり,なぜそうしないのか疑問がわきます.SIPCホース等の取り付けのいい加減さを考慮すれば,同じ様に何も考えずに作業された結果と推測されてもおかしくありません.
ここで部品の状況から明らかなことは,ホースに赤の線が一本入っているということです.少なくとも現在では新品のホースは無地であることから,指定された品番の純正ホースでないことが分かります.そして径が小さいことも分かります.これらを総合すると,身近にあった径の小さなホースを代用したものの,径が小さい為にホースが差し込みにくく,途中でやめたと推測されます. |
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【整備内容】
ホースの取り付け不良とは別にコックそのものがOFFの状態でも,24時間で10ml程度ガソリンが漏れ出す為,燃料ホースと同時に新品に交換しました.また紛失していたクリップを新品にしました. |
図2.1は新品のコックに正確に取り付けられた燃料ホースの様子です.当たり前の話ですが,ホースはこのように正確に根元まで取り付けなければなりません.今回はクリップが付いていなかった為,新品を手配しました.また錆びていた擦れ防止のスプリングも併せて新品に交換することにより,機能はもちろんのこと,各部が銀色に光り非常に美しい外観を取り戻すことができました. |
図2.2 燃料タンクに正確に取り付けられた新品の燃料コックと燃料ホース |
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図2.2は燃料タンクに新品のコックおよびホース類を取り付けた様子です.これが本来の姿ですから,初めの状態がいかに非常識で気分の悪いものであるかが容易に分かるはずです.もう一度図1.1をご覧下さい. |
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【考察】
ホースを根元まで正確にきちんと差し込むという作業は,基本の中の基本です.したがって,ホースが硬くても何でも,とにかく最後までやり遂げなければなりません.今回の事例ではホースの差し込みが途中で終わっている上,ホースを固定する部品が片側しか付いていませんでした.この様な状態は,例えば幼児の工作であれば許されますが,二輪自動車では許されません.
エアベントホースやブリーザホースと違い,燃料ホースは脱落すれば確実に車両火災の危険が発生します.つまりホースの中でも最も重要かつ厳重に管理されなければならないものであると言え,脱落防止はもとより,劣化による亀裂が発生する前に定期的に新品に交換しなければなりません.そして燃料ホースとして指定されている部品は耐ガソリン性を備えており,一般のホースではガソリンに浸食されてガソリン漏れにつながることも頭に入れておく必要があります. |
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