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事例:E-199

クラッチケーブルエンジン側アジャスタの調整不良により重くなったクラッチ操作について

【整備車両】 
 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型  推定年式:1983年  参考走行距離:約9,200km
【不具合の状態】 
 クラッチ操作が重い状態で動きも渋くなっていました.
【点検結果】 
 この車両はお客様のご依頼により,エンジンの吹け上がりに引っ掛かりのある回転数が存在する ※1 ということでメガスピードにて修理を承ったものです.ここでは同時に整備したクラッチレバーの握りが極端に渋くなっていた事例について記載します.大きな原因はクラッチケーブルの不適切な取り回し ※2 と,アジャスタの調整不良の2点が挙げられ,ここではエンジン側のアジャスタについて記載します.


図1.1 不適切なエンジン側クラッチケーブルアジャスタ
 図1.1は不具合の発生していたクラッチ廻りを点検した際に確認したアジャスタの調整不良の様子です.付属している防護カバーをめくると,アジャスタが極端に引っ張られていることが分かりました.黄色矢印Lで示した部分がいわば引っ張り過ぎたボルトの距離です.通常の調整基準の2倍以上引かれていることから極端にクラッチ操作が重くなる直接的な原因の一つであると言えます.

【整備内容】
 
 損傷していたクラッチケーブルASSYを新品に交換し,エンジン側のアジャスタを適切な位置に調整しました.

図2.1 調整されたエンジン側クラッチケーブルアジャスタ
 図2.1は損傷していたクラッチケーブルを新品に交換し,エンジン側のアジャスタを適切に調整した様子です.不具合の発生していた図1.1のアジャスタ調Lの状態と比較すれば,アジャスタのエンジンカバーへのもぐりが深くなっていることが分かります.この状態がアジャスタの中間であり,クラッチ廻りの分解整備や新品ケーブルへの交換,レリーズ調整その他各部をリフレッシュしたことからエンジン側の調整はほぼ中間になります.

図2.2 整備の完了したエンジン側クラッチケーブルアジャスタ廻り
 図2.2は整備の完了したエンジン側クラッチワイヤアジャスタ廻りの様子です.実際に試運転を行い,クラッチ操作を含めた走行状態が良好であることを確認して整備を完了しました.

【考察】 
 クラッチ操作が重く渋い状態の車両は,クラッチケーブルアジャスタのエンジン側が極端に引っ張られているケースが多く存在し,その様な未熟な整備は極力避ける必要があります.今回の事例ではクラッチケーブルが損傷していたり,クラッチセンタナットが緩んでいたり ※3 ,クラッチ廻りが総合的に不具合を発生させていました.そしてその原因の半分は人的ミスが引き起こしたものであると考えられることから,整備技術者が正しく整備すれば避けることのできた不具合ということができます.したがって,単純な調整部位こそ実際には非常に重要であり,機関の損傷云々の前にまずは調整箇所を再度確認することから整備を開始すべきであることを示した事例であると言えます.


※1 吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて
※2 誤った取り回しによるクラッチケーブルの破損と重くなったクラッチ操作について
※3 クラッチセンタナットの緩みとクラッチ操作の違和感について





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