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事例:E-188

誤った取り回しによるクラッチケーブルの破損と重くなったクラッチ操作について


【整備車両】

 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型  推定年式:1983年  参考実走行距離:約9,200km


【不具合の状態】

 クラッチレバーの握りが極めて重くフィーリングの悪い状態でした.


【点検結果】

 この車両は吹け上がりに引っ掛かりのある回転域が存在する
※1 ということでメガスピードにて整備を承ったものです.

お客様が自走してこられた際に,すでにクラッチの操作に違和感を訴えられていたのでクラッチ廻りを点検すると,

クラッチレバーに握りが硬い,遊びが大きい,クラッチワイヤの消耗とクラッチレリーズの調整不良,

それにクラッチセンタナットの緩み
※2 クラッチスプリングの衰損 ※3

そしてプッシュロッドの組み間違え等がありましたが,ここではクラッチワイヤについて記載します.



図1.1 無理な取り回しにより亀裂の入っているクラッチケーブル

 図1.1はクラッチケーブルに亀裂の発生している様子です.

タンク下の無理な取り回しが長期化したことにより,金属端部の付け根部分に角度が付き千切れかかっていました.

無理な取り回しはクラッチ操作を重くする原因のひとつであったといえます.

 またクラッチレリーズの調整不良の帳尻を合わせる形でケーブル側のアジャスタが過度に張られていて,

端的に言えば遊びが多く引きが重いという調整になっていました.

もっともクラッチ内部の不具合により操作に違和感がプラスされていることも加味しなければなりません.



図1.2 曲がりの生じているワイヤ

 図1.2は破損したケーブルを拡大した様子です.

エンジンのレリーズ調整不良やセンタナットの緩み等クラッチ各部に不具合が発生していて,

それが複合的にクラッチ操作を重くし,ライディングフィールを悪化させていたと結論付けられます.


【整備内容】

 クラッチ廻りを総合的に一式整備することにより機能の改善を図りました.



図2.1 新品のクラッチケーブル取り付け部

 図2.1は新品のクラッチケーブルを正確にエンジンに取り付けた様子です.

その他のクラッチ廻りの整備とあわせて,試運転においてスムーズな操作が得られたことを確認して整備を完了しました.


考察】

 GJ21A型はクラッチケーブルとキャブレータのスタータレバー及び燃料コックが近接している為,

正しい取り回しが非常に大切であり,これを怠ると各部にケーブルが干渉して無理な力がかかりる為,

損傷の原因になるばかりでなく,クラッチ操作が重いものになってしまう恐れがあります.

今回の事例ではクラッチケーブル以外にも複数の不具合が同時に発生していましたが,

中にはプッシュロッドとスチールボールの取り付けが逆になっている等,人的なミスも見られました.


 この車両は中古でお客様が入手されたものであり,発売が1983年で複数のオーナーとなっているものについては,

もはや開けてみなければ実際には分からない,と疑ってかからなければならないレベルであるといえます.

確かにお客様が修理の為メガスピードまで自走で来られ,走ることは走りました.

しかしその“走った”という語句からは,ただ走ったというだけで,クラッチ操作が重くなっていた事実は読み取れません.

大切なのは,30年前の中古車はそんなものかもしれない,あるいは初期ガンマはそんなものかもしれない,

と車両を誤った認識で評価してしまうことです.

もしその様な認識のまま一生を過ごすことになれば,楽しさ半減,

せっかくの初期ガンマのオーナーとして非常に残念な結果であるといえます.

発売が1983年であろうと,中古車であろうと,クラッチが極端に重くなっているのは不具合です.

したがって,あれ?何かおかしいな,と感じたら,その感性を大切にし,不具合を直す方向に動けるかどうかで,

その後のバイクライフは全く異なったものに変化するといえ,

特に発売から数十年経過しているモノに対しては,一度リフレッシュしておくことが求められます.





※1 吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて

※2 クラッチセンタナットの緩みとクラッチ操作の違和感について

※3 衰損したクラッチスプリングとクラッチ操作の違和感について






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