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事例:E-190

衰損したクラッチスプリングとクラッチ操作の違和感について


【整備車両】

 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型  推定年式:1983年  参考実走行距離:約9,200km


【不具合の状態】

 クラッチ操作に違和感がありました.


【点検結果】

 この車両はお客様のご依頼により,エンジンの吹け上がりに引っ掛かりのある回転数が存在する ※1 ということで,

メガスピードにて修理を承ったものです.

今回の事例では,操作に違和感のあったクラッチ廻りのうち,クラッチスプリングについて記載します.



図1.1 新品のクラッチスプリング(左)と取り外したスプリング

 図1.1はクラッチ廻りを分解して取り外したスプリングと新品のスプリングを比較した様子です.

自由長を測定する前にすでに目視の段階で取り外したスプリングが衰損して潰れていることが分かりました.



図1.2 新品のスプリング自由長の測定

 図1.2は新品のクラッチスプリング自由長を測定している様子です.

新品に対して取り外したスプリングは1mm以上縮んでいることが分かりました.

これは節度ある操作が損なわれるだけでなく,動力を伝達する性能が低下していたことを示します.



【整備内容】

 損傷していたケーブル
※2 緩んでいたセンターナット ※3 ,順番が逆に取り付けられていたロッド等をすべて是正し,

衰損していたスプリングもすべて新品に交換しました.



図2.1 新品のスプリングの取り付け

 図2.1は新品のクラッチスプリングを取り付けている様子です.

取り外したすべてが同様に縮んでいたことから,



図2.2 整備の完了したクラッチ廻り

 図2.2は整備の完了したクラッチ廻りの様子です.

スプリングを締め付けるボルト及びワッシャも同時に新品に交換し万全を期しました.

最終的にすべての箇所で整備を終え,

試運転してクラッチの操作感や動力伝達が良好であることを確認して整備を完了しました.



考察】

 バイクのミッションがドグクラッチであることを考慮しても,

クラッチ操作は発進時において必要不可欠であるといえ,通常走行では変速時に必ず操作する機関です.

したがって,エンジンの吹け上がりと同様にその性能や操作感は適切なものでなければライダーには違和感が発生します.

その為,理想的には不具合が発生する前に定期的に点検整備される必要がありますが,

もし実際に操作感に異常を感じたり,明らかに不具合が発生してしまった場合には迅速に点検整備される必要があります.


 今回の事例では各部の不具合が複合的に絡まって,クラッチ操作感の悪化につながっていました.

中には未熟な人的整備ミスも含まれていましたが,

部品としても発売が1983年ということを考えれば交換時期にあるといえます.

やはり排気バルブのない2サイクルエンジン独特のフィーリングを楽しむ為にも,

クラッチ廻りに違和感を感じたら,あるいはその前に,一度正確にリフレッシュしておくことが望ましいといえます.





※1 吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて

※2 誤った取り回しによるクラッチケーブルの破損と重くなったクラッチ操作について

※3 クラッチセンタナットの緩みとクラッチ操作の違和感について






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