トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:241~250)


事例:E-242

フロートチャンバに流入した雨水によるエンジン始動不能について

【整備車両】 
  マグナ50 (AC13) MG50X  推定年式:1996年  参考走行距離:約14,200 km
【不具合の状態】 
 エンジン始動不能に陥っていました.
【点検結果】 
 この車両は通勤で使用しているものの,ある時からエンジン不動に陥ったということでメガスピードで整備を承ったものです.ガソリンエンジンの3大要素である圧縮,火花,燃料から総合的に点検を実施しました.点検の結果燃料ホースから燃料が染み出していた
※1 為,修理を実施しました.ここでは不動に陥った原因究明について記載します.

図1.1 透明な液体の付着しているプラグ
 図1.1 は取り外したプラグの様子です.中心電極と設置電極それに碍子に透明の液体が付着していました.透明のサラサラした液体は水である可能性が非常に高いと言え,車両を引き取りにお伺いしたときに,お客様がセルを回し,エンジンがかからないとの症状を再現された直後なので,燃料系統に水の混入を疑いました.

図1.2 キャブレータドレンホースから排出されている雨水
 図1.2 はキャブレータ内部の状態を確認する為に,まずドレンボルトを緩めた様子です.断続的ではあるものの,小皿一枚分の水と推測される液体が出てきました.お客様への問診の中で,雨の中走ったときにエンストすることがある,保管中にシートをかけない状態で雨に濡れたことがある,との情報があったため,おそらくこの水とみられる液体は雨水であり,燃料キャップ等から侵入した可能性があります.それはエアクリーナが乾燥して正常であることからも裏付けられます.


【整備内容】
 燃料コックから燃料ホースを取り外し,燃料タンクからはガソリンが正常に供給されることを確認しました.したがって,コックからキャブレータまでの雨水の混入したガソリンを排出し,新しいガソリンをタンクから供給させることにより,燃料系統から水分を除去することから整備を開始しました.

図2.1 雨水の排出されたフロートチャンバ
 図2.1 は雨水を排出してガソリンが供給されていることを確認したフロートチャンバの様子です.火花の簡易点検,エンジン圧縮圧力の測定その他エンジン始動に必要な部位の点検整備を実施し,セルを回すとスムーズにエンジンが目覚めました.


【考察】 
 バイクは機関がむき出しの為,車と違って雨水には弱いものです.特に発売から10年以上経過した車両であれば,燃料タンクのキャップ部から雨水が浸入して燃料系統に溜まることがあります.この事例ではキャブレータのフロートチャンバ室内が完全に占領される量の水が排出されました.エアクリーナ側の状態が問題ないことから,雨水の侵入口はタンクキャップが濃厚になります.普段通勤で使用されているということを考えれば,例えばごくわずかな水分であれば,そのまま燃焼して,多少回転が不安定になっても,次のガソリンでまた正常な燃焼に戻り,エンジン回転もスムーズに戻ります.しかし今回の事例ではフロートチャンバがまるまる占拠されてしまう量だったため,それは燃料タンク底部に溜まっていた雨水が何らかの原因で一気にキャブレータに流れ出した可能性が排除できません.
 バイクを保管する環境は人それぞれです.したがって,もし屋外保管になる場合は,最低限バイクシートを確実に車体にかぶせ,直接雨水が当たらないようにしておくことが今回の様なエンジン始動不能に陥ることを回避する有効な手段であることを忘れてはなりません.


※1 劣化による亀裂がもたらす燃料ホースコック側からのガソリン漏れについて





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