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事例:E-214

腐って固形化したガソリンの付着したスロットルバルブ内部について

【整備車両】 
 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1987年  参考走行距離:約23,500 km
【不具合の状態】 
 1番,3番シリンダの燃焼不良により加速状態が悪化している状態でした.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードで不具合の整備を承る直前に他店で整備されたものですが,SIPCホースが最後まで取り付けられていなかったり ※1 ,各部に不具合が見られた為,それぞれについて整備し直しました.ここでは腐敗したガソリンが固形化していたスロットルバルブ内部について記載します.

図1.1 腐ったガソリンの付着しているニードルホルダ
 図1.1は腐敗したガソリンの付着しているニードルホルダおよびネジの頭の様子です.この車両はお客様が他店で購入されてすぐにメガスピードで整備を承った為,それ以前の状態は不明ですが,キャブレータ廻りのどこからか,腐ったガソリンの独特の臭気が発生していました.
 他店でキャブレータのオーバーホールが実施されていたはずということですが,図の様に,スロットルバルブ内部は汚染された状態でした.スロットルストップスクリュにOリングが取り付けられていなかったり
※2 ,その他の整備不良を考えれば,オーバーホールしたと言っても,この部分は未点検あるいは汚れはそのままでただ分解しただけという状態である可能性は否定できません.
 ここから読み取るべき一番大切な情報は,腐敗臭がしているということです.そして腐敗臭は長年放置したことにより変質したガソリンから放たれる臭気であることから,車両は少なくともそのような状況下にあったと推測できます.しかし車体全体的に鉄系の材料が赤錆だらけになっているということはなかった為,屋内保管であったと考えることができます.

図1.2 腐敗したガソリンが詰まったねじ溝
 図1.2はホルダをスロットルバルブに固定するスクリュの様子です.ねじ溝は完全に腐敗したガソリンで埋め尽くされていて非常にきつい悪臭を放っています.4気筒ともこの様な状態に陥っていました.早急にこの悪臭を解消する必要があることが分かります.

図1.3 腐敗したガソリンの堆積しているスロットルバルブ内部
 図1.3はホルダを取り外したスロットルバルブ内部の様子です.底部に腐敗したガソリンが付着していて,やはり悪臭を放っていました.


【整備内容】
 
 腐敗したガソリンが詰まったスクリュはワッシャつきの新品のスクリュすなわちスクリュワッシャに交換し,ホルダを可能な限り洗浄研磨しました.また空燃比を適正に調整しました.

図2.1 新品のスクリュワッシャと洗浄研磨されたホルダ
 図2.1は新品のスクリュと洗浄研磨されたホルダの様子です.スクリュは新車時ではスクリュとワッシャが一体構造になっているのに対し,パーツリストの補給部品としての純正部品では,スクリュとワッシャの2つに部品設定が分かれている為,特にワッシャが紛失しやすく見た目もスマートではありません.したがって,新車時の設定と同じ形のスクリュワッシャを当社のルートで手配しました.
 またホルダは可能な限り洗浄し,腐ったガソリンだけでなく,経年のシミや汚れを研磨することにより見事な銀の光沢を取り戻しました.

図2.2 洗浄されたスロットルバルブ内部
 図2.2は可能な限り洗浄したスロットルバルブ内部の様子です.これにより腐ったガソリンの悪臭を極力除去することに成功しました.

図2.3 バルブに取り付けられたホルダ
 図2.3は洗浄されたスロットルバルブに,洗浄研磨の完了したホルダを新品のスクリュワッシャで取り付けた様子です.

図2.4 整備の完了したスロットルバルブ
 図2.4は新品のジェットニードルをスロットルバルブに取り付けた様子です.

図2.5 エンジンに取り付けられたキャブレータ
 図2.5はエンジンに調整・整備の完了したキャブレータを取り付けた様子です.図の赤色矢印で示したTがキャブレータ内部のスロットルバルブの位置になります.試運転を重ね,加速力が良好であることを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 2サイクルエンジンのキャブレータの構成としては大きく
① ボデー本体  ② フロートチャンバ  ③ スロットルバルブ
の3つに分けることができます.今回の事例で他店は③のスロットルバルブについて手入れしていなかった可能性が高いと言えますが,ニードルが含まれているスロットルバルブは非常に重要であり,その位置の調整で吹け上がりに大きな差が出ると言っても過言ではありません.したがって,他の部位と同様に,スロットルバルブ廻りも正確に整備される必要があります.

 250Γや400/500Γはもちろんのこと,200Γも発売が1980年代後半から90年代前半であることを考えれば,もはや経年劣化は避けられません.そして他店で購入したものの吹け上がりが悪い為,そのまま当社で整備し直すことが非常に多いのは,その理由のひとつに“額面通りではない”ということが言えます.そしてその額面通りでないモノに対して膨大な研究時間と費用を投資したからこそ,メガスピードでは優れた吹け上がりをお客様に提供できるのです.もちろんその為の技術料をいただくことになりますが,それに見合った加速力を一人でも多くの方にお届けし,満足していただけるよう日々研鑚を重ねております.

 個人売買であれ,店頭からであれ,中古のガンマを手にした時,『あれ?』 と思ったら,おそらくその感覚は正しいと思います。古いからこんなものかな,と思う前に,是非一度ご相談下さい.当社がチカラになれるはずです.坂道を登らないとか,平地で加速が悪いとか,それは古さのせいではありません.何か原因があるからです.

 2ストバイクは世の中から消えていき,やがて乗ったことがある人もいなくなるでしょう.しかし2ストに乗ったことがあるのと無いのでは,車もバイクも両方乗ったことがある人と,バイクは未経験で車しか乗ったことが無い人と同じくらいの差があると私は思います.ただし何でもかんでも2ストに乗れば良いというものではありません.1つだけ条件を付けるとすれば,それは吹け上がりの良い2ストです.2ストの魅力は色々ありますが,そのトルクの出方,吹け上がり方が一番だと考えます.したがって,平地でまともに加速しない2ストバイクに乗ったとしても,それは乗ったことにはならないのです.


※1 差し込みの不適切なSIPCホースについて
※2 
スロットルストップスクリュのOリングがエアスクリュに誤使用された影響について





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