トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 電装関係の故障、不具合、定期点検、一般修理の事例 (事例:51~60)


事例:D-57

よじりや針金の使用によるウインカー配線接続と切断されたポジションランプ電源について

【整備車両】 
  ZEPHYR (ゼファー) (ZR400C) ZR400-C4  年式:1992年  参考走行距離:約15,500 km
【不具合の状態】 
  ポジションランプが除去された上,配線を含めたフロントウインカの取り付けが不適切でした.
【点検結果】 
 この車両はお客様のご依頼によりブレーキホースや燃料漏れの発生したコック ※1 等を整備したものですが,今回は取り付けが不適切なフロントウインカについて記載します.

図1.1 ブレーキホースに干渉しているウインカーボルト
 図1.1は右側フロントウインカーの様子です.取り付けボルトが長すぎて,ブレーキホースに接触していることが分かります.お客様が車両を入手された時点ですでにこの状態になっていました.過去になぜこの様な社外ウインカーが取り付けられたのか不明ですが,ボルトがブレーキホースに擦れるだけでなく,見た目が見苦しい状態でした.また黄色の円で囲んだ部位の配線もボルトの出口から90度真下に直角に曲げられていました.これは断線の原因になります.
 これらの状況をふまえ,お客様にPOSHの新品のウインカーをお持ち込みいただき,そちらに交換することにしました.

図1.2 針金で巻かれたコルゲートチューブ
 図1.2は針金で巻かれたコルゲートチューブの様子です.ウインカー交換の為に配線の様子を見ようとしたところ,指先に鋭い痛みを感じました.良く見ると黄色の円の部位に線径の小さい細い針金でコルゲートチューブの口が広がらないようによじってありました.幸い出血はしませんでしたが,この処理は非常に危険であり,早急に是正される必要があります.
 また明らかにあとから巻かれたビニールテープがチューブから顔を出していました.ほとんどの場合,ほつれたビニールテープの下にはろくなことがありません.

図1.3 切断されたポジションランプ電源
 そして予想を裏切ることなく,いつもの様にしょうもない事例が待ち受けていました.図1.3はビニールテープをほどいた様子です.黄色の楕円で囲んだ部位に確認できますが,何とポジションランプの配線が途中で切られていました.この様なデタラメなことがやられていた原因は,おそらく取り付けられているウインカーにポジションランプの設定がない為だと考えられます.つまりポジションランプがない為に配線があまったので切断してテープの下に隠してしまったということです.これではポジションランプが点灯せず保安基準に適合しないと言えます.
 更に内側に配線一本ずつビニールテープが巻かれていたので,それもはがして内部を確認しました.きっと残念な状態であろうことを予想しながら・・・

図1.4 よじられて接続されているウインカー配線
 図1.4は配線がよじられて取り付けられている様子です.ビニールテープの下はこの様な状況になっていました.確かにその場限りであればよじって終わりでしのげるかもしれません.しかし半田でロウ付けされているわけでもなく,そのままよじっただけでは何かの拍子で配線が動かされればすぐに解けてしまいます.そしてそ性能云々ではなく,私だったら自分のバイクの配線がこの様な状態になっていたら気分が悪くなります.


【整備内容】
 ウインカーをポジションランプ付きのPOSHの新品に交換することで取り付けボルトの見苦しさを改善し,同時に配線も正確かつ美しくやり直しました.

図2.1 ギボシ加工された車体側ウインカーおよびポジションランプの配線
 図2.1は車体側の配線をギボシ加工した様子です.上からウインカー電源,ポジションランプ電源,アースとなっています.3つともメス端子を使用したのは,POSHのウインカー側の配線がすべてオス端子で製品化されていた為です.

図2.2 絶縁加工されたウインカー側オス端子
 図2.2はウインカー側のオス端子に絶縁加工した様子です.市販の状態ではオス端子に絶縁カバーが取り付けられていない為,金属部を予め絶縁ゴムで覆いました.これを実施しておかないと,メス端子に接続した場合,メス側のカバーからオス端子がはみ出る場合があります.

図2.3 接続されたウインカー側と車両側のギボシ
 図2.3は車両側のメスギボシとウインカー側のオスギボシを接続した様子です.メス側のカバーから少しはみ出した部分まで確実に絶縁されていることが分かります.これにより確実に配線が接続されただけでなく,見た目も美しくなりました.

図2.4 車両に接続されたウインカー
 図2.4は車両に接続されたPOSHウインカーの様子です.ボルトがステー際で終わっていることから新品に交換したブレーキホース ※2 にも干渉せず,また配線も折れることなくスムーズに配置されていることが分かります.最終的に配線はコルゲートチューブで覆います.

図2.5 点灯しているポジションランプ
 図2.5は点灯しているポジションランプの様子です.ウインカーが新品になり本体そのものが美しくなっただけでなく,スマートに接続された配線,そしてポジションランプの正常な動作といったプラス面が非常に多い事例となりました.


【考察】 
 今回の事例のテーマは2つあります.1つ目は配線のよじり,そして2つ目はポジションランプです.

 まず配線をよじっただけの接続状態は応急処置です.つまり出先のトラブルや仮付実験,その他腰を据えて整備できない場合にするものです.今回の事例ではウインカーの配線の接続がよじられて終わりであった上,ポジションランプの配線が切られて一緒にテープで巻かれ,さらにそれをコルゲートチューブで巻いて針金で縛り上げていました.つまり➀配線をよじっただけの接続、②ポジションランプ配線の切断,③針金で縛り金属はむき出し,という3連コンボが繰り出された状態でした.中でも特に縛ってよじられた針金の端部は硬く鋭く危険です.これは絶対に真似すべきことではありません.コルゲートチューブを使用していることから,おそらく作業者は永久的に固定する為に手持ちの針金で縛り上げたのだと思います.どこか他店でやられたのか,自分でやってしまったのかは分かりませんが,これはかなりダメな部類に入ります.

 次にポジションランプですが,ウインカーを社外品にする場合は必ずポジションランプの有無を確認すべきです.そうすれば今回のようなポジションランプの配線を切ってテープで隠すという様な細工は必要ないのです.本来ポジションランプすなわち車幅灯は必須であり,除去することそのものが誤りであると言えます.

 一見問題なく動作している部位に関しても,よく見て見ると突貫工事の様な処理がされている場合が少なくありません.特に配線接続や電源分岐等は手抜き工事されることが多い部位であり,業者の作業でも,安い工賃でやったり,未熟者が作業した場合にこの様な事例に至ります.メガスピードでは配線接続1か所でも丁寧に仕上げ,性能はもとより見た目の美しさも大切にして整備します.それは性能だけでなく,機械的に美しいものを所有する悦びもバイクには大切な価値観のひとつであると思うからです.


※1 経年劣化した燃料コックからのガソリン漏れについて
※2 社外ブレーキホースカシメ部の亀裂と液漏れの危険性について





Copyright © MEGA-speed. All rights reserved.