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事例:D-63

ブレーキスイッチ接続端子の隙間拡大によるフロントブレーキランプの点灯不良について

【整備車両】 
 ZRX (ZR400E) ZR400E-2  年式:1995  参考走行距離: 20,800 km
【不具合の状態】 
 ブレーキランプが点灯しない状態でした.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードにて継続検査(車検)のご依頼を承り,それに備えて法定定期点検を実施したものです.シフトペダルのアジャストロッド固定ナットが外れていたり ※1燃料コックからガソリンが漏れていたり ※2 と様々な不具合が見られましたが,今回の事例ではその際に修理したブレーキランプが点灯しないという不具合について記載します.

図1.1 隙間の広がっている端子
 図1.1は隙間の広がっているL型端子の様子です.フロントブレーキスイッチまでの電源電圧の確保やスイッチ本体に異常がないこと,リヤブレーキでは点灯することから端子に不具合が発生していると判断し,取り外しました.すると図の様に左右ともスイッチ側への接続部の隙間が過大になっていて,接触不良を起こしていました.
 この程度であれば通常は端子を変形させれば性能が回復することが少なくありませんが,今回は何をやっても接触不良が直らず,ブレーキランプが点いたり点かなかったりという状態から抜け出せませんでした.車検の時は100%の確実性で作動しないと検査に通らない為,端子そのものを変更することにしました.


【整備内容】
 ハンドルスイッチからの端子を187型の平型に変更し,配線を少し長めに加工作成しました.

図2.1 フロントブレーキランプスイッチに取り付けられた187型の平型端子
 図2.1の黄色の円で囲んだ部位は配線加工した187型の平型端子をブレーキランプスイッチに接続した様子です.平型で作成した為,その取り回しの分,配線を長くしました.これにより確実にフロントブレーキランプが点灯するようになりました.

図2.2 点灯しているブレーキランプおよび番号灯
 図2.2はブレーキランプの点灯状態を確認している様子です.番号灯と共通のバルブの為,非常に明るくなっています.動作が確実になったことにより保安基準を満たしたことから,万全の状態で車検に臨むことができるようになりました.


【考察】 
 ブレーキランプは保安基準にかかわる灯火類の中でも良く故障する部位です.実際に点検したときは問題ないのに車検場に着いたとたん不安定になり,検査をやり直しになることもあるような危険な部位です.特に端子が摺動するスズキの車両に多く採用されていたスイッチは不具合を発生させることが多々ありますが,この事例の様に端子が外部に露出した車両でも,やはり発売から数十年経過すれば不具合を発生させます.

 今回の事例では不具合はスイッチそのものではなく,スイッチに接続する配線の端子部でした.おそらくこの端子が広がってしまっているということは,何度か手荒に抜き差しされた経緯があると考えられます.いづれにしろブレーキランプは確実に動作しなければ保安基準を満たさず検査に合格できません.またその場しのぎで何とか不安定な動作で合格させることができたとしても,公道を走行するのであれば,ブレーキランプは追突されることを避ける為にも確実に動作しなければ安心して乗ることができません.

 お客様にこの事例を報告すると,ランプが点灯していないことに気付かなかったとおっしゃっていました.確かにバイクのブレーキランプは自分で乗っている状態では点灯状態が分かりませんし,実際に自分で毎回運転する前に点検するようなところでもありません.したがってこの様な部位こそ法定12か月点検や,車検前の24か月点検が効いてきます.車検制度について是非があるのはもちろんですが,メガスピードという整備事業者の立場とすれば,車検の前の法定定期点検は非常に大切であると考えますし,それを強制的に設ける車検という制度も,安全を維持するという観点からは支持されるべきものであるという見解です.もちろん当社は陸運局の認証工場ですから点検なしで車検のみ代行するというような不安全行為,危険行為は行いません.そもそも点検も整備も何もしなければ車検そのものに何の意味もありません.

 ブレーキランプは追突されるのを避ける為にも非常に重要な装置です.ましてバイクはフロントブレーキがメインですから,これが不点灯な状態では事故死する確率を増やしているのと同じことです.その様な事態を避ける為にも,メガスピードでは法定定期点検を重要視しています.それが安全性の向上につながるのは確実なことです.


※1 シフトペダル・アジャストロッド固定ナットの緩みとシフトフィーリングの悪化について
※2 燃料コックからのガソリン漏れと車検時の点検整備について





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