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事例:S-87

スフェリカルベアリングの脱落によるヘッドライトのガタつきについて

【整備車両】 
 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1988年  参考走行距離:約58,000km
【不具合の状態】 
 ヘッドライトがガタついている状態でした.
【点検結果】 
 この車両はエンジンの始動が不能になったということで,お客様のご依頼によりメガスピードで修理を承ったものです.結果的にオイルチェックバルブの衰損
※1 が原因でしたが,ここでは同時に整備した,ガタついていたヘッドライトの不具合について記載します.


図1.1 触るとガタつくヘッドライト
 図1.1はヘッドライトの取り付け状態を点検している様子です.スフェリカルベアリングを使用しているモデルは必ずと言って良いほどそれが損傷してガタつきが発生しています。この車両も例に漏れずガタつきが発生していました.

図1.2 脱落しているベアリング
 図2.2は軸受けから脱落しているスフェリカルベアリングの様子です.これが原因で取り付けが不十分になりヘッドライトがガタガタしていたと判断することができます.

図1.3 破損しているスフェリカルベアリング
 図1.3は取り外したスフェリカルベアリングの様子です.軸受け側は半分ほど欠損していました.またステー取り付け側も摩耗して片側のストッパがなくなっていました.もちろん経年による劣化もありますが,実走距離が約6万kmに達していることから走行中の振動による影響も無視できないと言え,6万km走行する過程で路面や2サイクルエンジンによる振動を受け続けていれば樹脂が破損するのは無理もないことです.

図1.4 シールテープの破損しているレンズ部
 図1.4は防水を兼ねたシールテープが劣化によりボロボロになっている様子です.レンズ部はコーキング処理されていますが,雨風を十分にしのぐにはシールテープの巻きつけが重要になります.
【整備内容】
 
 スフェリカルベアリングは修復不能であることから新品に交換し,同時にスプリングや調整ねじ,それに樹脂ナット等構成部品もすべて新品に交換して対応することにしました.

図2.1 シールされたレンズ外周
 図2.1はヘッドライトのレンズ外周をシールし直した様子です.これにより雨風をより効果的に防げるようになりました.

図2.2 新品の各ヘッドライト構成部品
 図2.2はスフェリカルベアリングを含めたヘッドライト構成部品の様子です.樹脂ナットの交換は必須であると言えますが,調整スクリュやスプリングも経年により錆が発生している場合が少なくない為,一式セットでリフレッシュしておくことが重要になります.

図2.3 車体に取り付けられたヘッドライト
 図2.3は組み立ての完成したヘッドライトを車体に取り付けた様子です.その他の部分の整備も含めて走行できる様になった段階で試運転を兼ねてテスターに持ち込み,光軸調整を行って整備を完了しました.


【考察】 
 部品の材料が樹脂である場合,経年によりその多くが破損します.例えば摘まんだ瞬間に折れる洗濯バサミを連想すれば容易に理解することができるはずです.紫外線は大敵ですが,それ以外にも10年以上時間が経過すれば直射日光を受けない部分にあっても材質は劣化します.特に1980年代中盤のGSX-Rシリーズ ※2 RG-Γシリーズにこの部品が使用されていることが多く ※3 ,同様の症状が発生しているのは当社の既存事例からも明らかです.したがって,中古車で入手した場合にはまずリフレッシュしておきたい部位であると言え,この車両の様に新車から所有されていた場合においても,やはり破損している可能性が高いことを忘れてはなりません.


※1 オイルチェックバルブの衰損により短期間で2サイクルオイルで満たされたフロートチャンバについて
※2 スフェリカルベアリング抜けどめ部の摩耗によるヘッドランプのガタつきについて
※3 スフェリカルベアリングの軸受け側の破損によるヘッドライトのガタつきについて





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