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事例:S-70

経年劣化により下側が裂けたブレーキペダルラバーについて


【整備車両】

 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1987年  実走行距離:約1,200km


【不具合の状態】

 ブレーキペダルラバーが破損しており操作感が悪化している状態でした.


【点検結果】

 この車両はお客様が10年程度の長期保管されている間に始動不能に陥ったものですが,

各部を点検した結果,エンジン始動以外にも様々な不具合が見つかりました.

今回の事例では,車体廻りを目視点検した際に発見したブレーキペダルラバーについて記載します.



図1.1 下側の裂けているブレーキペダルラバー

 図1.1は下側が完全に裂けてしまっているブレーキペダルラバーの様子です.

走行距離が1,200kmとほとんど乗られていないことから、使用による摩耗等は見受けられず,

経年劣化による亀裂であると判断することができます.

このままでは操作時にゴムの位置ずれにより操作が不安定になり危険を伴う為,対応が必要になります.




図1,2 取り外したラバー上側

 図1.2は取り外したラバー上側の様子です.

走行距離が実走で約1,200km程度であることから,ペダルの使用による摩耗はほとんど見られませんでしたが,

全体的に材質そのものが硬くなり,柔軟性が著しく欠落しており,結果的に裂けてしまったと考えられます.



図1,3 裂け目の状態

 図1.3は裂け目の状態を確認している様子です.

図からも分かる様に,すでに断面そのものが劣化して退色が見られる為,

裂けてしまってからある程度の時間が経っているものと考えられます.

また周囲の状況や裂け方,断面等を総合的に分析すれば,外力によるものではなく,

ペダルに取り付けられた時に引き伸ばされた力の反力に耐え切れずに裂けたものであると推測されます.



【整備内容】

 裂けたゴムは再使用不可能であり,幸いまだ新品の部品供給があることから,ペダルラバーを新品に交換しました.



図2.1 新品のブレーキペダルラバー

 図2.1は新品のブレーキペダルラバーの様子です.

ゴムに柔軟性がある為,ライダーの操作にしなやかに追随することが期待できます.



図2.2 新品のラバーの取り付けられたブレーキペダル

 図2.2は新品のラバーをブレーキペダルに取り付けた様子です.

新品のゴムは表面がブーツ裏に吸い付く様なしっとりとした状態の為,意図した通りのブレーキング操作感が期待できます.

またアルミ合金の腐食も研磨したことにより,機能だけでなく,見た目も美しく再生することができました.



【考察】

 この事例では,ゴムの溝がほとんど摩耗していないことから走行距離が少ないものであると推測され,

それは新車からのワンオーナー車両かつ走行距離が1,200km程度であることから裏付けられます.

つまり部品は使用しなくても,時間の経過とともに崩壊していくことを示しています.

そして樹脂部品は特にその進行が早く,少なくとも発売から10年経過した車両であれば,

走行距離にかかわらず,樹脂部品は点検整備しておく必要があります.

もっとも,
過度の使用によりペダルのゴムが擦り減る方が先 ※1 という場合も確かに存在しますが,

得てしてバイクは趣味の乗り物として使用されるケースがその大半であるといえ,

その場合にはゴムを使い切る前に経年劣化により亀裂や損傷の発生する場合が少なくありません.

またこれとは逆に同じ部品を使用しているRG500Γ (HM31A) の,

ペダルのゴムの上側が完全に裂けてしまった
※2 事例もありますが,

いずれの場合にも,消耗品のひとつであると捉え,早めに交換しておくことが求められます.





※1 “極度に摩耗したペダルラバーによるシフト操作の不正確性について”

※2 “経年劣化により破損したブレーキペダルラバーとブレーキ操作感の悪化について”






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