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事例:S-68

極度に摩耗したペダルラバーによるシフト操作の不正確性について


【整備車両】

 GSX400R (GK71B) GSX-R 2型  年式:1985年  参考走行距離:不明


【不具合の状態】

 シフト操作にわずかな違和感が生じていました.


【点検結果】

 この車両はお客様のご依頼を承りメガスピードにて点検整備を実施したものです.

ここでは摩耗したシフトペダルラバーについて記載します.



図1.1 外側が極度に摩耗したシフトペダルラバー

 図1.1はシフトペダルラバーの外側が極度に摩耗している様子です.

外側の2ブロックは完全に摩耗して凹部と面一になっていました.

また材質も硬化して柔軟性がなくなりグリップ力が低下していると判断できる状態でした.

これではシフトダウン操作時に少しでも摩擦係数の低い条件で操作した場合に,

つま先が外側に流れて滑ってしまう可能性があります.



図1,2 最も激しく摩耗しているシフトペダルラバー下側

 図1.2は整備の為にシフトペダルを取り外し,下側の摩耗状態を確認している様子です.

上側より更に激しく摩耗していて,外側から3ブロックが完全に面一になっていました.

シフトダウン操作時と同様にシフトアップ操作時にも滑りを生じ車体外側につま先が流れてしまう危険性があります.



【整備内容】

 すでに摩耗が著しく修正は困難であることから,新品のラバーに交換する段取りを組みました.



図2.1 新品のシフトペダルラバー

 図2.1は新品のシフトペダルラバーの様子です.

新品は深い溝が端部まで正確に作られている上,材質のゴムが柔らかく優れたグリップ力を発揮することが期待できます.



図2,2 整備の完了した左ステップ廻り

 図2.2は新品のラバーに交換したシフトペダルをエンジンに取り付けた様子です.

各部の点検整備を完了してから実際に走行し,節度あるシフト操作が可能になったことを確認しました.

また腐食及び汚損のあったペダルを洗浄研磨し美しさを取り戻しました.



【考察】

 特に雨天時にはその差が歴然とする為,例え晴れている日にしか乗らない場合でも,

途中で雨に降られるケースを想定して,摩耗したラバーは早めに新品に交換しておくことが,

安心安全に直接結び付き,まさに少ない投資で絶大な効果を得られるいわゆる費用対効果の優れた部位であるといえます.


 シフト操作は2輪を操る上で非常に重要なポイントであることに疑いの余地はなく,

それは公道において尚一層正確性が求められます.

なぜならミッションやクラッチが正常でもシフト操作機構が正しく整備されていなければそこで何らかの機械的ロスが生じ,

それがシフトシャフトスラスト方向であれば,節度ある操作は望めず,シフトフィーリングの悪化につながり兼ねません.

特に公道を走行する場合,信号待ちでのスムーズなニュートラル操作は非常に重要です.

中々ギヤがニュートラルに入らずに,いつまでも1速と2速の間をガチャガチャシフトしている様では

スマートなライダーとはいえませんし,

また発進・加速時に1速から2速にシフトする際にニュートラルに入ってしまい,

2速でスロットルを開けたつもりが大きな空吹かしになって,

あわてて2速に入れ直して涼しい顔をしているライダーの姿も格好の良い物ではありません.


 その様なことを避ける為にもクラッチやミッションと同等にシフト操作機構の整備は大切であり,

やはり距離や年式を考慮してシフトペダルラバーに亀裂や摩耗が発生した場合は,

すみやかに新品に交換されることが望ましいといえ,

シフトペダルと同じ様な構造のブレーキペダルに使用されているラバーに亀裂等が発生した場合
※1 も,

いち早く新品に交換されることが求められます.





※1 “経年劣化により破損したブレーキペダルラバーとブレーキ操作感の悪化について”






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