YPVSキャップねじのナメとワイヤ調整不良について |
【整備車両】
R1-Z (3XC) 3XC1 推定年式:1991年 参考走行距離:約15,200 km |
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【不具合の状態】
YPVSのワイヤの調整が不適切でした.またプーリーキャップのねじがナメていました. |
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図1.1はYPVSワイヤケーブルのシリンダ側の様子です.L1とL2を比較すると,あまりにも調整ねじ溝の残量が違い過ぎることが分かります.本来このように極端に差はでないので,内部プーリーの調整不良が発生していると考えられます.またL2側のアジャスタカバーはきちんと差し込まれておらず,外れかかっていました. |
図1.2の黄色の円で囲んだ部分は,シリンダ側プーリーのキャップを締め付けるねじの頭がナメている様子です.過去のいづれかの段階でねじを緩めようとして失敗した為にナメてしまってそのままになっているものであると考えられます. |
図1.3 破損しているYPVSプーリーキャップ締め付けスクリュ |
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図1.3はナメていたねじを抜き取った様子です.ねじ溝にかなりの錆が発生していますが,ほとんど固着は見られませんでした.これは近い過去に一度脱着されたことを示しており,その際にねじの頭をナメた可能性があります.そして1年程前に他店でピストンリングを交換したということなので,おそららくその時にナメて再使用してしまったと推測されます.
ここまで破損している場合は,例え自分がナメてしまったものでなくとも,やはり新品に交換しておくことが望ましいと言えます.それは次に作業する時のことだけでなく,見た目の美しさも当然考慮しなければならないからです. |
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【整備内容】
YPVSワイヤASSYを左右ともに新品にすると同時に,ワイヤを固定するプーリーやその取り付けボルト等,そして塗装の剥がれていたキャップカバー,ナメていたスクリュを一式新品に交換しました. |
図2.1 新品のプーリーおよびキャップとその周辺部品 |
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図2.1は左から新品のプーリー,ワッシャ,スプリングワッシャ,プーリーをシリンダに固定するボルト,そしてプーリーハウジングをカバーするキャップとその取り付けねじの様子です.すべて部品供給があったことから,迷わず一式リフレッシュしました. |
図2.2はYPVSの初期位相を調整したプーリーの様子です.これによりすべての回転域において正常な排気バルブの位相を確保することができました. |
図2.2は新品のプーリーキャップを新品のスクリュでシリンダに取り付けた様子です.図1.2と比較すれば,この様に小さな部品が新しくなることで全体のイメージが驚くほど美しく変化することが実感できるはずです. |
図2.3は新品のYPVSワイヤをモータ側に取り付けた様子です.YPVSはモーター駆動ですから,ワイヤ内部に抵抗が生じれば,モーターの動きが滑らかでなくなります.今回の事例ではワイヤを交換して取り付ける際に潤滑した為,非常に動きが滑らかになっています. |
図2.5は正しく調整されたYPVSのワイヤアジャスタ部の様子です.アジャスタ部のねじ溝残量が左右でほとんど等しいことが分かります.図1.1の状態を比較すれば,いかに調整不良であったかを理解することができます. |
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【考察】
YPVS (Yamaha Power Valve System) は低速トルクを豊かにすることが目的の排気バルブです.これがあるのとないのでは,出だしからパワーバンドまでの加速感に雲泥の差があります.それは排気バルブがあるモデルと無いモデルを乗り比べればすぐに分かることですが,いかに排気バルブ装着車が洗練されたものであるかを体で実感することができます.
もちろん排気バルブの無いモデルの方が2サイクルエンジンらしい出力特性になりますが,もともと低速トルクが無くてノロノロしたものがパワーバンドに入り加速するだけの話であり,その落差が大きい為に加速力が大きいと勘違いしているケースが多々見られます.しかし実際には排気バルブのあるモデルは低速から豊かなトルクがある為,よーいドンで競争したのなら,排気バルブの無いモデルがモタモタしながらやっとこパワーバンドに入った頃には,排気バルブ装着モデルはすでにパイイイイィーンッ!と,お先に失礼しているのです.いくらピークパワーがあっても,そこに達するのが明日の朝では全く意味がありません.
ではR1-Zはどうでしょうか.私の個人的な感想は,低速トルクを確保しながら,高回転は身の危険を感じる様な加速力を発揮する,非常に楽しいモデルです.その様な車両の排気バルブを操作するワイヤですから,尚一層のこと,調整には万全を期したいものです.もちろんナメたねじは極力新品に交換しておくことが望ましいのは今更言うことでもありません. |
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