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極端に狭くなったバルブクリアランスの調整について


【整備車両】

ZX400-D2 (ZX400D) GPZ400R  年式:1984年  参考走行距離:約14,600km


【不具合の状態】

4番シリンダ吸気バルブのクリアランスが狭過ぎる状態でした.


【点検結果】

この車両は他店で購入された直後に様々な不具合により,メガスピードにて修理を承ったものです.

ヘッドカバーからのオイル漏れが発生していた為,その修理と同時にバルブクリアランスの調整も実施しました.

その際に4番シリンダ吸気バルブ右側のバルブクリアランスが極端に狭くなっていることを確認しました.




図1 狭過ぎるバルブクリアランス

図1はシクネスゲージにより測定された4番シリンダ吸気バルブ右側のバルブクリアランスの様子です.

約0,04mmと参考規定値から大幅にずれた状態でした.

この状態では暖機後にバルブクリアランスがなくなり,常時バルブが開いたままになる可能性が否定できず,

もしそうなれば圧縮不足を引き起こし,燃焼不良を発生させ極端に出力が下がるだけでなく,

そのことにより関係機関に悪影響を及ぼす恐れがあり,早急に調整が必要であるといえます.


【整備内容】

バルブクリアランスを調整することから整備を行いました.

図2 適正に調整されたバルブクリアランス

図2は整備書で指定された数値を考慮し,

年式や走行距離等を含めて総合的に判断して調整されたバルブクリアランスの様子です.

24バルブすべて点検して不適切な寸法になっていたものはすべて調整し,

試運転を行い問題がないことを確認して整備を完了しました.


【考察】

4サイクルエンジンにおいてバルブクリアランスは定期的に整備されなければならない機関の中でも,

最も重要な箇所のひとつであるといえます.

吸気バルブのクリアランスが狭くなる原因は,バルブとバルブシートの摩耗が考えられ,

熱膨張した時点で0を超えればバルブが常時開いた状態になり,圧縮が下がり極端に出力が低下します.

かつては継続検査いわゆる車検時には法定定期点検の弁すき間の調整,

すなわちバルブクリアランスの調整が点検項目に含まれていた為,

定期的に点検される機会が現在よりはずっと多かったといえます.

しかし4輪のラッシュ・アジャスタの登場により,

バルブクリアランスが0という性能が当たり前になった現在では法改正によりその項目は削除された為,

特に2輪の様な単純な機械式のバルブ機構のエンジンではその機会を失い,

点検調整されずに維持されていることが少なくありません.

また250cc未満の軽二輪は車検制度がないことや,

車検がある車両の場合でも,実際には法定定期点検時にバルブクリアランスの調整が,

どの程度実施されていたのか疑問が残ります.

やはり機械式のヘッドであれば,自発的積極的に,そして定期的にバルブクリアランスを調整することにより,

エンジンを最適な状態に保つ必要があるといえます.





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