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パッキンの劣化によるシリンダヘッドカバーからのオイル漏れについて


【整備車両】

ZX400-D2 (ZX400D) GPZ400R  年式:1984年  参考走行距離:約14,600km


【不具合の状態】

シリンダヘッドカバーからオイル漏れが発生していました.


【点検結果】

この車両は他店で購入された直後に様々な不具合により,メガスピードにて修理を承ったものです.

ヘッドカバーからのオイル漏れが発生していた為,その修理と同時にバルブクリアランスの調整も実施しました.

その際に4番シリンダ吸気バルブ右側のバルブクリアランスが極端に狭くなっていることを確認しました.

ここではヘッドカバーからのオイル漏れの修理事例を記載します.



図1 オイル漏れの形跡のあるシリンダヘッド前面

図1はオイル漏れが発生していたと考えられる油汚れの様子です.

シリンダヘッド前面だけでなく,ヘッドカバーにも汚れが付着していました.



図2 オイルが漏れ出しているシリンダヘッドカバー左前

図2はオイルが漏れ出しているヘッドカバー左前側の様子です.

エンジン停止状態の保管中にオイルが漏れ出したため,パッキンの密封能力は著しく低下していると考えられます.



図3 シール材の塗布されていないカムシャフト端部

図3はヘッドカバーを取り外しパッキンをめくった様子です.

多くのエンジンはカムシャフト端部のシリンダヘッド半円部に液体ガスケットが使用されていますが,

この車両には見受けられませんでした.

整備書には液体ガスケットを使用する指示があるので,新車時には使用されていなかったのか,

あるいは過去にヘッドカバーが取り外された経緯があり,

その時に素人整備された為,液体ガスケットが塗布されずにパッキンが取り付けられてしまった可能性が高いといえます.

このことが直接オイル漏れに結び付くかどうかの判断は難しいものの,

症状としては当該部分からオイルが漏れ出していました.



図4 劣化したオイルが凝固付着したパッキン取り付け溝

図4はヘッドカバーのパッキン取り付け溝の様子です.

溝には全周に渡り劣化したエンジンオイルが凝固してこびりついた汚れが発生していた為,

長期間ヘッドカバーが取り外されていなかった可能性を示しています.

これはバルブクリアランスが大幅にずれていたことからも裏付けられます.


【整備内容】

オイル漏れの原因であるパッキンを新品に交換することから整備を行いました.

図5 点検洗浄されたパッキン取り付け溝

図5は点検洗浄されたヘッドカバーのパッキン取り付け溝の様子です.

可能な限り下地を良好な状態にすることにより,パッキンの密封性能を損なわないようにしました.



図6 新品のパッキン(上)と取り外した古いパッキン

図6は新品のパッキン(上)と取り外した古いパッキンの様子です.

取り外した古いパッキンは潰れ切っていて張りがなく,シール性能が低下していたと判断でき,

これがオイル漏れの原因のひとつであると判断できます.



図7 カムシャフト端部の合わせ面に塗布された液体ガスケット

図7はカムシャフト端部の合わせ面に液体ガスケットを塗布した様子です.これによりシール性が確保されました.



図8 オイル漏れの解消したシリンダヘッドカバー

図8はオイル漏れの解消したシリンダヘッドカバーの様子です.

他の部分の不具合の修理やオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)等を実施し,

試運転を行い,オイル漏れが解消したことを確認して整備を完了しました.


【考察】

シリンダヘッドカバーからのオイル漏れは,パッキンの劣化がその原因のひとつである場合が少なくなく,

熱的にみても極めて厳しい部位に位置し,内部でのオイルの飛散量も多く,使用状況は過酷であるといえます.

通常はゴムパッキンがほとんどであり,材質から経年による劣化も同時に進行する為,

ある程度エンジンを使用すればオイル漏れは必至であり,

症状が出た場合は早急に修理が行われなければなりません.

そしてオイル漏れが発生する頃には,

バルブクリアランスの調整が行われなければならない走行距離に達している場合が多く,

修理の為にヘッドカバーを取り外した場合は同時に弁すき間も調整しておくことが望ましいといえます.

4サイクルエンジンにおいてバルブクリアランスは定期的に整備されなければならない機関の中でも,

最も重要な箇所のひとつであるといえます.

やはり機械式のヘッドであれば,定期的にバルブクリアランスを調整することにより,

エンジンを最適な状態に保つ必要があるといえます.

その為にもヘッドカバーからオイル漏れを確認した場合は,早めに修理を行うことが求められます.





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