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事例:E-222

プランジャの燃料シール部ゴムの変形と左右で長さの違うチョークケーブルについて

【整備車両】 
 R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:約15,200 km
【不具合の状態】 
 正規のケーブルでない為,無理な取り回しで配置されていました.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードで整備を承る前に他店でヘッドガスケットおよびピストンリングを交換したとされるものです.当社で点検したところリザーバタンクには全く冷却水が入っておらず,ラジエータにもキャップ口元付近は冷却水が無い状態でした
※1 .これではオーバーヒートに陥る危険性があります.この車両は他店で中古で購入されたお客様から,不具合の改善を承るべくメガスピードで整備を承ったものです.各部に異常が見られましたが,今回の事例では,不具合の発生していたチョークケーブルASSYについて記載します.

図1.1 左右の長さの違うチョークケーブル
 図1.1は取り外したチョークケーブルASSYの様子です.チョークレバーのピン軸受け部が破損している ※2 上,本来同じはずのケーブルが左右で長さの異なる状態でした.これはキャブレータが他車種のものに交換されていた為,それに合わせて交換されたものであると推測されますが,R1-Z用のキャブレータに戻す際に,装着が困難な状況でした.

図1.2 始動燃料密封部ゴムの変形したプランジャ
 図1.2はプランジャ廻りの様子です.特に青矢印で示した始動燃料を通常時に密封する為のゴム部が変形していることにより,密封性能が低下している為,混合気が濃くなるおそれがありました.


【整備内容】
 一番交換したい部品はプランジャのみでしたが,部品がASSYで設定されている為,プランジャ廻りを新品にしました.また破損していたチョークレバー,左右で長さの違うケーブルもあわせて正規の新品に交換することにより,チョーク操作系統をすべて新品に交換しました.

図2.1 新品のプランジャASSY
 図2.1は新品のプランジャASSYの様子です.左からブーツ,リターンスプリング,ホルダOリング,ホルダ,Oリング付属プランジャになります.これによりチョーク操作時以外で燃料の燃焼室への漏れを確実に防ぐことが可能になりました.

図2.2 組み立てられた新品のプランジャ廻り
 図2.2は新品のチョークケーブルに新品のプランジャ廻りを組み付けた様子です.青矢印で示した部分が新品のシールゴム部ですが,図からも分かる様に新品では平滑になっており,キャブレータ側に密着する様になっています.

図2.3 組み立てられたチョーク機構
 図2.3はチョーク機構を組み立てた様子です.新品のレバーに新品のケーブル,新品のプランジャASSYを取り付けました.本来のケーブルは図の様に左右で同じ長さに指定されています.

図2.4 キャブレータに取り付けられた新品のチョーク機構
 図2.4は新品のチョーク機構をキャブレータに取り付けた様子です.赤の円で囲んだ部分がホルダでありキャブレータに連結している部位になります.各部が新品であること,特にレバーの性能が戻った為,操作感が非常にスムーズになりました.実際の試運転でもチョーク機構の動作は良好でした.


【考察】 
 この車両はキャブレータが他車種のものに交換されていた為,チョークケーブルも変更されていました.それが適切だったかどうかは分かりませんが,いづれにしろキャブレータをR1-Zの純正に戻した為,チョークケーブルも純正に交換しました.
 特にプランジャのシールゴムが変形していた他,ホルダのOリングも潰れていたことからASSYでの交換も十分視野に入れるべきではありますが,できれば単品での部品設定が欲しいものです.しかし,発売が1991年頃であることを考えれば,例えASSYだとしても部品供給があるだけありがたいと思わなければなりません.


※1 空になったリザーバタンクとラジエータ内の冷却水不足によるオーバーヒートの危険性について
※2 
軸受け部の摩耗により抜け落ちたピンと半分脱落したチョークレバーについて





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