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事例:129

プラグの焼け具合と実際の走行状態について(型式:GJ72A)


【整備車両】

 GSX250RCH (GJ72A) GSX-R250  推定年式:1987年  参考走行距離:約14,000km


【不具合の状態】

 エンジン始動不可能な状態でした.


【点検結果】

 この車両はエンジン始動のみ販売業者と立ち会いのもとで確認して購入されたものですが,

納車後3日でエンジンがかからなくなりました
※1

ここでは不具合の原因の判断材料であるスパークプラグについて記載します.



図1.1 不具合を発生させているスパークプラグ

 図1.1は取り外したスパークプラグの様子です.

イリジウムは構造的にかぶりにくくなっていますが,

取り外したプラグは全体に煤が堆積している状態であり,1番3番はガソリンがかぶっていました.

明らかに燃焼不良を発生させていたと判断することができます.

2番4番に関しても,キャブレータの燃料系統が適切で本来の性能を発揮していれば,

正しく焼け切れているはずであることから,何らかの異常が発生している可能性があると判断しました.



【整備内容】

 キャブレータのパイロットジェットに詰まりが発生していた為,その整備を実施してスパークプラグを新品に交換しました.



図2.1 カーボンを焼き切っている碍子部

 図2.1は整備完了後に試運転を行い,プラグの焼け具合を確認した様子です.

碍子部及びその周辺のカーボンは完全に焼け切れている為,燃焼は良好であると結論付けられます.

また実際の加速や最高速等から判断しても,パワーユニットは性能を発揮していると考えることができます.




図2.2 レース用スパークプラグの燃焼状態

 図2.2は参考にレース用プラグ (NGK R0161-11) を使用して燃焼状態を示した様子です.

メインジェットは標準で#92.5ですが,その前後を含めて加速がおかしくならないレベルでの様々なセッティングにおいて,

走行した結果,すべて碍子部は白く焼ける状態でした.

イリジウムの9番を含めて8番から11番までのプラグで確認しましたが,大きな変化は見られませんでした.

もちろん碍子部の形状からして差異がある為,レース用のプラグと標準プラグ,

それにイリジウムの熱価を単純に比較することはできませんが,

これらのことから,GJ72Aは標準仕様あるいはそれに近い状態においては,

実走行において正常に性能を発揮している場合は碍子部が焼け切る様な表情を示すと結論付けることができます.

6速レッドゾーン付近ではメーター表示が170km/h程度になりますが,

問題なくそこまで加速することからエンジンの性能は十分に発揮されているといえ,

逆に極端にメインジェットを濃くすると,確かに薄く碍子部に煤が付着してきますが,

その状態ではモサッとして吹け上がりが悪く,尚且つレッドゾーン付近で頭打ちになります.

明らかに加速状態が悪いので,性能を発揮しているとはいえません.

すなわち,プラグの焼け具合がすべてではなく,あくまでも実際の走行状態,

走行性能からベストを探るべきであることを示唆した結果であると考えることができます.



考察】

 空燃比の調整を行う場合,プラグの焼け具合と実際の加速が非常に重要になってきます.

今回はプラグの焼け具合を主題にしましたが,

様々な燃料の調整パターンを実施しても,見た目が机上の理想色にならない場合があります.

それは当然“理論と実際”という言葉が存在するように,何事もすべて型通りにはならないことを示しています.


 この事例では碍子及び電極部が焼け切る状態でしたが,実際の車両の走行性能は抜群であり,

ことGJ72Aに関しては標準セッティングで細部まで整備して調子が良い場合,

あくまでプラグの焼け具合に関して言うのであれば,焼け切るパターンが非常に多いといえます.

つまり数多くの結果からJ702という内燃機に対するBSW27という気化器を使用した場合の焼け具合は,

概して焼け切る状態が一般的であると考えざるを得ません.

“燃焼”とは様々な要因からなる複雑な現象であり,

プラグの焼け色のみで燃焼温度や燃焼状態をすべて解析することは不可能であるといえます.


 重要なのはプラグからの情報だけでなく,排気量やエンジン形状に対する燃料量がどれくらいか,

という指標から大きく逸脱することなく,実際の走行において必要且つ十分な,

そして満足の行く加速フィーリングを得られるかどうかに帰着することであるといえます.





※1 “パイロットジェットの詰まりとプラグのかぶりによるエンジン始動困難について”






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