事例:126
【整備車両】
K125S (コレダ S10) 推定年式:1995~2000年 参考走行距離:約23,100km |
【不具合の状態】
走行可能であったものの,スパークプラグの状態から性能が低下していたと推測されます. |
【点検結果】
この車両は走行中にシフトがロックして変速できなくなった ※1 ものをメガスピードにて修理したものです.
今回の事例ではプラグの焼け具合について記載します.
まずエンジンの状態を確認する為に圧縮圧力を測定しました.
図1.1はエンジンの圧縮を測定している様子です.
約900kPaと良好であることから,圧縮には問題がないことを確認しました.
図1.2は圧縮測定の為に取り外したスパークプラグの様子です.
ガスケット上部は泥と油の混合物で周囲が汚染されていました.
このエンジン (型式:S10) は空冷でエンジンカバー等がないことから,前輪で巻きあげた泥や埃,砂等が,
シリンダヘッド冷却フィンやプラグ周囲に堆積する為,
取り外したプラグの状態から長期間交換されていないことが分かります.
図1.3は電極部を拡大した様子です.
全体的にカーボンが堆積して盛り上がっており,特に絶縁体は上から見える範囲でほとんどすべて覆われている為,
絶縁不良を引き起こしていた可能性が否定できません. |
【整備内容】
キャブレータが燃料漏れを発生させていた為,その整備を実施してスパークプラグを新品に交換しました.
図2.1は整備完了後に試運転を行い,プラグの焼け具合を確認した様子です.
碍子部及びその周辺のカーボンは完全に焼け切れている為,燃焼は良好であると結論付けられます.
また実際の加速や最高速等から判断しても,パワーユニットは性能を発揮していると考えることができます. |
【考察】
この車両は4速ロータリー式のいわゆるビジネスモデルであり,
性能曲線を見ても85km/h程度が限界であることが分かります.
しかし実際にはそこまで出すのにかなりの直線が必要であり現実的ではありません.
車両の用途目的が低速における市街地近距離の移動であるのは,
プラグの標準番手が4番5番であることからも明白です.
今回の事例でも車両の限界性能に近い速度で走行すると,
7番プラグでも碍子部に薄く色がつく程度で燃焼温度が高くなることが確認できました.
したがって,車両の使用方法としては低速トルクが発生したら早めにシフトアップし,
最高速度も法定速度を下回る領域での使用が好ましいといえます.
最大トルクの発生が5,500rpmと比較的低くそこからあまり高回転が伸びないエンジン特性であることは,
実際に乗ってみれば容易に理解することができます.
また主燃料系統から判断すると,最終のS型はそれ以前のモデルに比べてかなり絞られている為,
燃焼温度及びプラグの焼け具合にかなり影響しているといえます.
これらのことから,車両は設計目的に合致した用途で使用することが望ましく,
それがエンジンを始め各部の寿命を引き延ばすばかりでなく,
エンジン特性を理解した知的で最も効果的な走行方法につながります.
※1 “シフトシャフトリターンスプリングの折損によるシフトロックがもたらす変速不能について”
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