事例:94
過走行によるスパークプラグ碍子部へのカーボンの堆積について |
【整備車両】
SE50MSJ (AF19) DJ.1RR 推定年式:1988年 参考走行距離:10,000km+約3,500km |
【不具合の状態】
スパークプラグ碍子部にカーボンが堆積していました. |
【点検結果】
この車両はスロットルワイヤが切れてしまい発進不可能となった ※1 お客様のご依頼を承り,
メガスピードにて各所点検整備を承ったものです.
走行距離を考慮しスパークプラグを点検すると,碍子部にカーボンが堆積していました.
図1.1はスパークプラグ碍子部の様子です.
Aで示した部分はカーボンが表面に色を付ける程度なので,碍子そのものの大きさであるといえます.
Bで示したものは燃焼工程で生成されたカーボンを主とした堆積物であり,
ほぼ全周にわたり碍子を覆い隠し,約0.5mm近く盛り上がっています.
このまま放置すれば絶縁不良を引き起こし,エンジン停止に至る可能性が低くありません.
これは当社で走行距離約8,000km程度の時に新品に交換されたプラグであることから,
約5,500km程走行してこの様な状態に至ったものであるといえます. |
【整備内容】
取り外したスパークプラグがすでにメーカーの推奨交換時期に入っていることからも,
ブラストや洗浄といった修正は行わずに新品に交換しました.
図2.1は新品のスパークプラグ【NGK:BPR7HS】の様子です.
今回も取り付けていた番手と同じものを使用しました.
図2.2は約10km程試運転を行い,取り外して焼け具合を確認したスパークプラグの様子です.
いわゆるきつね色であり,ほぼ理想的な焼け具合を示していることが分かります.
実際の走行でも力強い加速,スムーズな吹け上がり,安定したアイドリング等を確認し,整備を完了しました. |
【考察】
スパークプラグは自己清浄温度の450℃程度から過早点火の900℃程度までが各々の番手による使用可能範囲ですが,
この事例では,取り付け時に理想的な焼け具合を示しているにも関わらず,
通常使用においても過走行になれば少しずつ堆積したカーボンが層になり,
やがて導体として絶縁不良を引き起こす可能性があることを示しています.
今回の整備においても,燃料系統を含めた他の調整変更は一切行わずに新品のプラグに交換して試運転を行い,
焼け具合のみならず,実際の走行でも理想的な運動性能を発揮していることからも,
長距離の使用においては,それに比例して碍子部を中心にカーボンが堆積していくことが分かります.
なるほど確かにこれはオイルも同時に燃焼する2サイクルエンジン特有の現象であり,
碍子部に堆積した生成物の主成分の発生原因がオイルであるという考え方や可能性も否定することはできませんが,
二輪自動車(この事例では原付になります)においては,
標準スパークプラグの推奨交換走行距離は3,000kmから5,000kmと短く,
その中でも特に2サイクルエンジンはオイルの問題も含むことから更に寿命は短いという考えに異論はありません.
スパークプラグにトラブルが発生すると,単気筒ではエンジン停止の危険性が非常に高いことからも,
やはり早め早めの予防的整備が求められる代表的な点検項目のひとつであるといえます.
※1 “スロットルワイヤの断線による発進不能について”
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