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スパークプラグ火炎核発生不良によるエンジン始動不可能について 


【整備車両】

SE50MSJ (AF19) DJ.1RR 推定年式:1988年  参考走行距離:7,500km


【不具合の状態】

エンジンが始動しづらい状態から始動不可能に陥りました。


【点検結果】

普通に走行していたものの、エンジンが始動しづらい状態からやがて始動不可能な状態になり、

メガスピードに修理のご依頼で入庫されました。

走行中にエンジンが止まったということではないので焼き付きの可能性は低いと考えられるものの、

まずはエンジンの圧縮を測定し、エンジン本体に問題がないか点検しました。



図1は複数の角度から撮影した圧縮圧力測定の際に取り外したスパークプラグの様子です。






図1 、電極付近に堆積物のある取り外したスパークプラグ

圧縮圧力そのものは1,000kPa程度あり、エンジンの状態は良好でしたが、

スパークプラグは図の様に、オイルとカーボンの混合物と考えれらる物質が堆積していて、

火炎核の発生するスペースが完全につぶされている状態でした。

また中心電極から垂直の位置には本来あるはずの接地電極がなくなっていて、

火花が規定すき間で放電できない状態でした。

原因としては異常燃焼(デトネーション)や過早点火(プレイグニション)による燃焼不良で、

混合気が不完全燃焼の結果として電極付近に堆積した可能性が考えられます。

また接地電極がなくなっているのは、異常燃焼により融解した、

あるいは過度の使用により消耗損失した可能性が考えられます。

エンジンはかかりが悪くなりながらも、かからなくなるまでは動いていたということなので、

長年の使用によりこのような状態に至ったのかもしれません。



スパークプラグがこの様な状態では間違いなくエンジンはかからないといえますが、

これとは別にエンジン始動不可能な原因が

キャブレータの組み付け不良によるものと判断できる現象も同時に発生していたので、

キャブレータに関する修理事例を別に取り上げました。こちらをご覧下さい。


【整備内容】

図2は不具合のあるキャブレータを分解整備し、

スパークプラグを新品に交換して20km程試運転し、取り外したプラグの様子です。

番手はもともと付いていた
BPR6HSから一つ番手を上げてBPR7HSを取り付けました。








図2、理想的な焼け具合のスパークプラグ

複数の角度から撮影した電極付近は、いわゆるきつね色に焼けていて、オイルの堆積もなく理想的な焼け具合でした。

始動、加速、ともに良好で、プラグの焼け具合からも燃焼状態が非常に良いことを確認しました。


【考察】

エンジンには“良い圧縮”、“良い混合気”、“良い火花”の3つの大きな機能が必要です。

今回の事例では“良い火花”が得られない為に、始動不可能な状態でした。

具体的には中心電極と接地電極の間に不純物が堆積したことにより火炎核の発生スペースがふさがれて、

十分な火花を飛ばせない状態になっていました。

メガスピードに修理入庫される前は走行していたとのことなので、

おそらく走行中に段々不純物が電極に堆積し、やがて放電不良による始動不可能に陥ったものと推測できます。

この車両はキャブレータとインシュレータの取り付けボルトが脱落していて、

マニホールドとキャブレータ間にすき間ができ、それも始動不可能な原因の一つになっていました。


マニホールドの取り付けボルトが走行中に脱落し、

すき間ができることによ発生した混合気の流れや空燃比の大幅な変化が、

燃焼行程における不純物の発生原因になっていた可能性もあります。



スパークプラグは“良い圧縮”と“良い混合気”、それに“良い火花”の3要素が崩れていなければ、

かぶったり焼け過ぎたりすることは少ないといえます。

それゆえスパークプラグがかぶってしまったときは、単に清掃あるいは新品に交換するだけでなく、

他に原因がないのか詳しく調べる必要があります。

それは何らかの不具合があれば、また同じようにスパークプラグが不具合を起こす可能性が高いからです。

いわばスパークプラグは機関全体の代弁者と見ることができるといえます。

やはりスパークプラグは定期的に点検し、状態を把握しておくことが最も大切なエンジン部品のひとつといえます。





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