断熱材の喪失による排気管の熱がもたらすオイルタンクへの悪影響について |
【整備車両】
RG400EW (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 1型 年式:1985年 参考走行距離:約15,200km |
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【不具合の状態】
オイルタンクが排気管から熱を受ける状態でした. |
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【点検結果】
この車両はカスタムショップと称する他店で購入されたものですが,燃料漏れが直らない ※1 ということでメガスピードにて不具合の修理を承ったものです.今回はオイルタンクの不具合について記載します. |
図1.1はオイルタンク周囲の様子ですが,本来あるはずの断熱材がなくなっていました.この状態では排気管からの熱が樹脂部品であるオイルタンクに悪影響を及ぼし,破損につながりかねません. |
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【整備内容】
オイル廻り一式整備する過程で,断熱についても同時に対策整備しました. |
図2.1はオイルタンクを取り外して内部を洗浄した様子です.断熱材のはがれた部位の残留物を除去し,下地を整えました.長期間入れっぱなしになっていたオイルの色でタンクそのものは変色していますが,内部はクリーンな状態になっています.
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図2.2は新品のヒートシールド(断熱材)をタンクに貼り付けた様子です.これにより熱からオイルタンクを守ることが可能です.オイルアウトレットのシールドはすでに絶版になっているため,保存しておいた型を基に同じ材質の材料を切り抜いて使用することで対処しました. |
図2.3は整備の完了したオイルタンクの様子です.2サイクルエンジンにとってオイル廻りの整備は非常に大切です.特にRG400Γにおいてオイルタンクの設置位置が2本のアッパチャンバに挟まれていることからも,耐熱処理はとても重要です. |
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【考察】
中古車はすでに多くのオーナーを経ている場合が少なくなく,特に数十年経過している車両であれば,この事例の様にシールで接着されている部品は無くなっていることがあります.装飾品等の機能的に問題ないものであればそれ程気をつかう必要はありませんが,このように熱から樹脂を守る断熱材であれば,迅速に補修しておく必要があります.
RG500/400Γは排気管に挟まれる形でバッテリーやオイルタンクが設置されている為,ともに断熱材で守られています.特にオイルタンクは樹脂で形成されていることから熱に弱く,変形したり溶けたりする為,最低限断熱材はストックの状態を保つべきであり,仕様によっては面積を増やす等の対策が必要です.
すでにオイルタンクそのものが絶版になっていて,中古部品の数も少ないことから,車両に着いているオイルタンクはできるだけ長持ちさせる努力が必要であり,それ以上に2サイクルエンジンの命ともいえるオイルを確実にエンジンに供給する為にも,断熱材の定期的な点検が望ましく,はがれそうになっていた場合はすみやかに対策することが大切です.
この事例ではシールドがなくなっていましたが,中古車でははがれかけているものも良く見かけます.両者とも同様に早急に対処すべきですが,はがれかけているとはいえ形が残っているものと,紛失して何もないものとでは熱に対する状況が全く異なります.この事例の様に何もなければ直接熱による影響を受ける為,より一層迅速な整備が求められます. |
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