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オイルホースの破損によるエンジン焼き付きの危険性について


【整備車両】

RG400EW-2 (HK31A) RG400Γ(ガンマ) Ⅱ型  1986年式  (参考)走行距離:約36,500km


【状況】

他社から現状販売で購入され、不具合が潜んでいるかもしれないということで当社で点検整備のご依頼を承りました。


【点検結果】

この車両はあるオートバイ販売店から、エンジン始動のみ確認済み、という現状販売でお客様が購入され、

メガスピードで点検整備を承ったものです。

通信販売で購入されたものなので、

受け取り時に配達者とお客様の2者でエンジン始動を確認しただけの状態ということでした。

お電話でのご相談だったので、無点検のものは、エンジンをかけない方が良いとお伝えし、引き取りに伺いました。

通常の分離給油であれば、2サイクルエンジンは外部からエンジン内部にオイルを圧送する構造の為、

オイルラインに異常があればそれは即エンジンの焼き付きに結び付きます。

ですので引き取り後、エンジン始動前にまず圧縮を測定し、次にオイルラインを点検しました。

エンジン圧縮圧力の測定はすべての前の段階で行う必要があります。

もし圧縮がなければ、オイルライン云々以前にエンジンを修理しなければならないからです。

この事例では測定の結果、4気筒ともエンジンの圧縮が約780kPあり良好であると判断できるので、

オイルラインの整備に移りました。



図1は4番シリンダキャブレータに接続されているオイルホース廻りの様子です。


図1 、破損している4番シリンダのオイルホース

オイルホースの端部から亀裂が発生しているのを確認しました。

ホースそのものもかなり硬化していたので、長期間使用され続けていたことが分かります。

ホースが容易に抜けないようにする為のクリップがないことや、燃料ホースの抜け止めクリップも付いていないことから、

最後に整備されたのは、その場しのぎであった感が否めません。

各部の状態から、最後に整備されてからかなりの年月が経過していることが推測できます。



図2、取り付け部の半分程度の破損が確認できるオイルホース

図2はオイルホース取り付け部の様子です。

付け根からホースが半分程度完全に裂けて(図のAの部分)、下部が脱落しているのが分かります。

残りのBの部分でかろうじてオイルホースが保持されています。

オイル漏れは発生していなかったものの、

ホースそのものはかなり硬化し、亀裂も全挿入部分の半分以上まで進んでいるので、

振動や風圧、その他の原因により、近い将来脱落する可能性があります。


【整備内容】

図4はオイルポンプの動作、吐出量の確認を行い、

エア抜きの完了した新品のオイルホースをキャブレータに取り付けた様子です。


図3、ストレート化されたチェックバルブに取り付けられた新品のオイルホース

キャブレータの差し込み部は圧着面積の広い金属のクリップが取り付けられ、容易に抜けないようになっています。

キャブレータ内部に圧入されているオイルチェックバルブは点検の結果、機能が低下していることを確認したので、

オイルチェックバルブの中身を取り除き、ストレート化することで抵抗を極力減らし、

オイルラインに新品のオイルチェックバルブを挿入することにより安全性を高めました。



※オイルチェックバルブについては以下2つの事例をご覧下さい。

   ①オイルチェックバルブの衰損によるキャブレータ内部への2サイクルエンジンオイルの流入について

   
②オイルチェックバルブの故障とロータリーバルブからのオイル漏れについて


【考察】

今回の事例の車両は、業者から一般ユーザーへの現状販売で、

エンジン始動のみ立ち会いのもと確認され購入された車両ですが、

やはり何も見ていないものは、不具合を内在している場合が少なくありません。

まして20年以上前に販売された古い車両であれば、本来エンジンをかけることでさえ慎重にならなければなりません。

例えば冷却水が抜けていたとしても、始動直後にはエンジンが冷えているので、即座に焼き付くことはありません。

しかし、エンジンオイル(2サイクルエンジンの場合は2サイクルエンジンオイル)が入っていない場合は、

金属同士が直接摺動し、摩擦により焼き付きに至ります。

長期間エンジンをかけずに保管しておいたもので、もしエンジンオイルが入っていなければ、

乾燥した金属同士が摩擦により擦れ合い、致命的な損傷をもたらします。

今回の事例のように2サイクルエンジンのオイルホースが何とかエンジン側につながっていたとしても、

本当にオイルは来ているのか、オイルポンプは動いているのか、ホースの途中に亀裂等の損傷はないか、

あるいはエアは混入していないか等、オイルに関係する箇所は、

エンジン始動前にすべての要因を点検整備しておくべきであるといえます。

見た目ではホースがつながっていても、実際には中身が入っていない場合があります。

あるいはオイルタンクにオイルが入っていて、ホースがエンジン部までつながっていたとしても、

内部が古い固形化したオイル等の堆積物で詰まっているかもしれません。

その状態でエンジンをかければ焼き付きといった損傷に至る可能性が否定できません。

やはり、どのような経緯で購入されたものでも、要点といえる箇所は必ず点検しておく必要があります。



近年メガスピードでは、業者からの通信販売や個人売買等の現状販売で購入したけれど、

どうも調子が悪いので見てほしいというご依頼が非常に多くなっています。

そのニーズに可能な限り応えられるよう、全力で日々精進していく所存です。





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