事例:E-187
固着したオイルフィラキャップ取り外し時の破損について |
【整備車両】
RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型 年式:1988年 走行距離:約58,000km |
【不具合の状態】
オイルフィラキャップのツマミが破損していて回せない状態でした. |
【点検結果】
この車両はメガスピードにてオイルチェックバルブを含めたキャブレータの整備 ※1 を承ったものですが,
今回の事例ではその時に同時に整備したオイルフィラキャップについて記載します.
図1.1は破損しているオイルフィラキャップの様子です.
固着していた為,ペンチ等で無理に回そうとした結果破損したということですが,
このキャップはプロフェッショナルであっても,非常に嫌な部位に相当します.
と言うのも,キャップそのものが樹脂であることから,いわゆるツマミを強く回すことができないばかりでなく,
工具をそのまま当てれば容易にツマミに工具痕が残る為,デリケートさが求められるのです.
しかも少しでも強く締め過ぎればたちまち固着して緩めるのが大変になるという非常に厄介な特性があります.
この手のフィラキャップを使用しているモデルは概ねその様な傾向にあり,
大概ツマミに工具痕が付いていたり,外そうと努力した形跡が見られます.
図1.2は取り外した破損していたオイルフィラキャップの様子です.
キャップ外周に傷があるのは,ツマミが破損していた為,その部位をプライヤで回したことによるものです.
このキャップはすでにツマミの半分が破損していたことから交換することを前提に直接プライヤで外しましたが,
本来は工具を使用した場合にも樹脂が傷つかぬ様に手厚く養生して取り外さねばなりません. |
【整備内容】
オイルフィラキャップOリングの接触部からオイル漏れが発生しない様に,
キャップ取り付け部周囲を洗浄し,キャップを新品に交換しました.
図2.1 点検洗浄されたオイルフィラキャップ取り付け部 |
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図2.1はオイルフィラキャップのOリングが接触する部位を中心に点検洗浄したものです.
接触部をクリーンな状態に保つとともに,上部から確認できる範囲でクラッチ内部を点検しました.
図2.2は新品のオイルフィラキャップの様子です.
取り外した古いものと比較すると形状としてはねじ溝から下が若干違いますが,
機能的な差はないと判断して差し支えありません.
大切なのは樹脂が若返ったことにより可塑性や弾力性が増したことです.
これにより,多少強く締め過ぎても固着せず,本体がねばりながら回転する為,
古いものと比較して固着した時に外しやすくなりました.
図2.3 エンジンに取り付けられた新品のオイルフィラキャップ |
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図2.3は新品のオイルフィラキャップをエンジンに締め付けた様子です.
オイル漏れ防止のOリングを新品に交換して適切なトルクで締め付けたことにより,
振動等で緩むことなく,且つスムーズに緩めることができるようになりました. |
【考察】
中古車のオイルフィラキャップはかなりの割合で工具痕が残されていたり,傷つけられたりして,
見た目が非常に痛々しくなっています.
確かに汚れたエンジンであれば,それ相応なイメージを醸し出して良いのかもしれませんが,
整備してエンジン外観をきれいにした場合には,やはりフィラキャップの損傷が気になるものです.
部品代としての投資額は非常に少ないものですが,新品のフィラキャップは素材の樹脂に柔軟性があり,
劣化して硬化しているものよりも,ねじの回り具合がスムーズです.
一番良いのは毎回オイルを入れる際に取り外す時は確実に養生して取り外し作業を行うことです.
この問題は社外のアルミキャップにした場合も同様に発生することが多い為,
常日頃から相手を傷つけぬ様に養生しながら作業を進める体制が求められます.
何しろ固着した時の硬さが尋常ではありませんが,本来は工具を使わず指で回せなければならず,
その為の節度ある締め付け技術を身につけておく必要があるといえます.
※1 オイルチェックバルブの衰損により短期間で2サイクルオイルで満たされたフロートチャンバについて
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