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事例:E-247

タンク挿入式燃料フィルターの紛失によるキャブレータからの燃料漏れについて

【整備車両】 
 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型  推定年式:1983年  参考走行距離:約13,900km
【不具合の状態】 
 燃料タンクにあるはずのフィルターが紛失していました.
【点検結果】 
 この車両はお客様が他店で購入された当初から7,000回転以上の高回転がスムーズに吹け上がらない ※1 という症状が発生していたということで,メガスピードにて故障診断およびその整備を承ったものです.オイルタンク内部にゼリー状のオイルが堆積していた ※2 り,様々な不具合が発生していましたが,今回の事例では,本来あるはずの燃料フィルターがなくなっていたという不具合について記載します.

図1.1 何もついていない燃料タンクの口部
 図1.1 は古い燃料ホースを交換する為に燃料タンクからホースを取り外した様子です.何と,本来あるはずの燃料フィルターがない状態でした.燃料フィルターがないということは,1983年の骨董品から流れ出たガソリンがそのままキャブレータへ行ってしまうことを意味しています.この車両は同時にキャブレータをオーバーホールしていますが,この状態でキャブレータを取り付けたとしたら,いくらオーバーホールしても錆が流れ出し,燃料漏れが発生してしまいます.


【整備内容】
 ON, OFF両側とも新品の燃料フィルターを取り付けました.またヨレていた燃料ホースを新品に交換し,防護スプリングおよびクリップ,そして燃料漏れの発生していたコックも同時に新品に交換しました.

図2.1 新品のRES側燃料フィルター
 図2.1はRES側の燃料タンク出口に新品のフィルターを取り付けている様子です.タンク内部は比較的良好な状態を維持していた為,今回新品を取り付けておけば長期的に濾過することが可能です.

図2.2 新品の燃料ホース,防護スプリングおよびクリップ
 図2.2 は新品の燃料ホースに新品の防護スプリングを取り付けた様子です.もちろんクリップも新品にして取り付け保持性能を向上させます.左側が燃料コックONに接続され,右側がRESに接続されます.燃料タンクとホースの接続部にフィルターが内臓される形になります.しかしこれだけでは発売当時の姿に戻しただけで,万全であると言うにはプラスアルファが必要です.

図2.3 燃料コックに取り付けている「フィルターB」
 図2.3 は更に燃料をクリーンにすべく,超小型かつ細目の「燃料フィルターB」を新品の燃料コックに追加している様子です.これにより燃料タンクに取り付けたフィルターとあわせて2重の濾過装置を取り付けたことになり,一層クリーンな燃料をキャブレータに送ることが可能になりました.

図2.4 フィルターの設置された燃料コック
 図2.4 はON側(左)とRES側の両方に燃料フィルターを取り付けた様子です.ON, RESのどちらの状態でも2回燃料を濾過することが可能になりました.
 この「燃料フィルターB」をコックに取り付けた最大のメリットは,燃料タンクを取り外さなくても燃料フィルターを掃除できることです.RG250Γの燃料タンクはコックの位置がタンクから離れている上,オイルタンクも付属している為,燃料タンクの取り外しが最も大変な車種であると言っても過言ではありません.本来燃料フィルターはタンクに取り付けてある為,掃除等メンテナンスの際はタンクを取り外す必要があります.ですがコックに取り付けることにより,タンクの取り外しよりはるかにメンテナンスしやすくなると言えます.もちろん最初に濾過される部分が大きい為タンク側のフィルターが汚れやすいのは事実ですが,それでもコック側でメンテナンスできるという利点は大きいものです.もっとも,タンク側のフィルターを外してコックの「燃料フィルターB」だけにすれば一番メンテナンスが楽ですが,その上流の燃料ホースの汚染を考えれば,根元のタンクで一番初めに燃料を濾過するのがベストであると言えます.

図2.5 整備の完了した燃料コック
 図2.5 は整備の完了した燃料コックの様子です.燃料ホースやその防護スプリング,そしてコック取り付けスクリュが新品になったことにより,新しい燃料コックを含めて周囲が非常に美しくなっています.
 古い2スト絶版車に乗るのであれば,性能はもちろんですが,この様な細部の清潔感にも気を配りたいものです.


【考察】 
 この車両は高回転の吹け上がりが悪いと言うことで,故障診断から燃調に狂いがあると判断してキャブレータをオーバーホールしてセッティングを変更しました.同時に燃料ホースをすべて新品に交換し,可能な限り燃料ラインをクリーンにしました.しかしもしキャブレータだけの整備であれば,タンク側の燃料ホースを外すこともなく,燃料フィルターの紛失にも気づかなかったはずです.その場合,汚れたガソリンが洗浄したキャブレータを汚染し続けると言う不毛な事態に陥りかねません.したがって,キャブレータを整備する場合は燃料ラインをすべて見ることが前提になります.そうでないと,同じことの繰り返しになるからです.


※1 高回転および低中回転の空燃比の狂いによるエンジンの吹け上がり不調について
※2 2サイクルオイルの変質硬化によるエンジン焼き付きの危険性について





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