トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例31~40)



燃料コックの不具合によるキャブレータからの燃料漏れについて


【整備車両】

RG400EW-W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) Ⅰ型  年式:1985年  参考走行距離:約12,400km


【不具合の状態】

3番シリンダキャブレータから燃料漏れが発生していました。


【点検結果】

この車両はエンジン不調により、修理のご依頼を受けメガスピードに入庫されました。

その際に3番シリンダキャブレータ下部からの燃料漏れが確認できました。

また各所点検整備する際に燃料タンクを取り外したところ、燃料コックOFFの状態でガソリン漏れが発生していました。


図1、燃料漏れを起こしているコック

図1はコックOFFの状態で燃料漏れを起こしている燃料コック廻りの様子です。

燃料ホースは社外のもので硬化していて、本来クリップで留めるべき付け根がタイラップで留められていました。

またフィルターが取り付けられていて、内部に錆が堆積していました。




図2、30秒間に漏れた燃料の量

図2は燃料コックOFFの状態で漏れ出したガソリンを計量した様子です。

30秒で約3,8mlの漏れが確認できました。

これは24時間(1日)に換算すると、約11リットルになります。

つまり額面通り流れ出せば、2日程度で満タンにしたタンクのガソリンがすべて外部に流れ出る計算になります。




図3、パッキンが潰れ、液体ガスケットで処理されていたコック付け根

図3は燃料タンクからコックASSYを取り外した様子です。

周りに液体ガスケットが使用されていたことから、おそらく以前に燃料漏れを起こし、

一時的な処理として液体ガスケットで応急処置が施されていたものであると推測されます。

目の字のパッキンが潰れていてほとんど張りがなかいことから、

燃料漏れはパッキンの性能低下によるものであったと考えられます。

取り外したときはコックの付け根からの燃料漏れは起きていませんでしたが、

液体ガスケットはガソリンに強いものでも、恒久的に使用するには問題がある場合が少なくありません。

やはりパッキンそのものを新品に交換して燃料漏れを直しておくことが必要であるといえます。




図4、ガスケットの欠損しているドレンボルト取り付け部

図4は3番シリンダキャブレータのドレンボルトを取り外した様子です。

本来あるべきガスケットが入っていませんでした。

これにより、チャンバとボルトのすき間からガソリンが漏れ出していたと考えられます。

また燃料コックそのものの不具合により、OFFでも常にガソリンがキャブレータに流れ込んでいた為に、

それがドレンボルトから少しずつ流れ続けていたものだといえます。

ドレンボルトそのものも、経年劣化でもろくなっていました。


【整備内容】

フロートチャンバを洗浄し、劣化していたドレンボルト及びそのガスケットを新品に交換しました。


図5、新品のドレンボルトとガスケット

図5は新品のドレンボルトの外観と、フロートチャンバに取り付けられたガスケットの様子です。

ガスケットの収まるハウジングも面が荒れていたので、修正してガソリン漏れの発生しないようにしました。

キャブレータを本体に取り付け燃料の漏れがないことを確認しました。




図6、スプリングピンの圧入

図6は新品で入荷した燃料コックASSYにユニバーサルジョイントを取り付けている様子です。

フラスコプレスにより、冶具を用いてスプリングピンや周囲のアルミ合金を傷つけることなく正確に圧入しています。



図7、新品のコックを取り付けた燃料タンク

図7は新品の燃料コックASSYを取り付けた燃料タンクの様子です。

燃料ホースを新品に交換し、抜け止めのクリップや欠損していた擦れ止めのスプリングも新品を取り付けました。

それと同時に燃料コックOFFの状態で、24時間後にガソリンが漏れていないことを確認して整備を完了しました。


【考察】

この車両はお客様が業者から現状販売で購入されたもので、

エンジンに力がない、吹け上がりが悪い、プラグがかぶる、といった症状を直すべくメガスピードに入庫されました。

この事例では3番キャブレータが燃料漏れを起こしていました。

点検整備の結果、ドレンプラグにガスケットが取り付けられていなかったことが原因でしたが、

燃料コックが正常に機能していれば、

燃料コックからキャブレータ間の燃料ホース及びフロートチャンバの容積分のガソリンが抜けてしまえば、

それ以上は燃料漏れが起きないはずです。

しかし実際はコックの衰損により燃料がOFFの状態でも常に流れていたので、

3番キャブレータのドレンボルトからはガソリンが漏れ続けていました。

コックから漏れる量は計測で24時間で約11リットルですが、

ドレンボルトの締め込みによるツバの部分とシートの部分との接触で、

漏れる量はそれよりは大幅に少ない状態でした。

それでもドレンボルトのすき間から漏れ続けていたので、長時間になれば漏れ出すガソリンの量は多くなり、

火災の危険性が非常に高くなります。

ドレンボルトから漏れ出す量は少しずつなので、

流れ出したガソリンに対する油面の変化に対する影響は、

フロートバルブから供給される燃料比で見ればほとんど性能に影響しないと考えられますが、

不具合につながる原因はすべて取り除いておく必要があります

やはりエンジン不調の改善のみならず、火災の危険性を避ける為にも、

燃料漏れは発見次第早急に対処すべきだといえます。





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