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事例:E-238

ボルトの緩みと経年劣化によるクラッチカバー取り付けボルトからのオイル漏れについて

【整備車両】 
  RG400EW (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 1型  年式:1985年  参考走行距離:約15,200 km
【不具合の状態】 
 クラッチカバーの取り付けボルト付近からオイル漏れが発生していました.
【点検結果】 
 この車両はお客様がカスタムショップと称される店で購入されたものですが,燃料漏れ等があった
※1 ことからメガスピードにて整備を承りました.今回の事例では,試運転後に発生したクラッチカバー取り付けボルトからのオイル漏れについて記載します.

図1.1 オイル漏れの発生しているクラッチカバー
 図1.1は漏れの発生源を特定する為に,クラッチカバーを洗浄してから試運転を実施し,15km程走行した時点で確認したときに撮影したものです.
 1985年頃の発売であることを考えれば,いつオイル漏れが発生してもおかしくはありません.今回は一か所だけですが,すべての個所が同じ状況であることを考えれば,部分的に修理してもすぐに他から漏れ出す可能性が高い為,きちんとカバー全体を取り付けし直す必要があります.

図1.2 オイル漏れ発生部
 図1.2はクラッチカバーを外した様子です.図はオイル漏れの発生していた部位ですが,目立つ傷や破損がないことから,経年劣化とボルトの緩み等が複合的に不具合を発生させていたものであると推測されます.


【整備内容】
 クラッチカバーとエンジン側の合わせ面を修正研磨し,新品のボルトおよびガスケットを使用して,更に漏れ対策を施してから規定トルクで締め付けました.

図2.1 修正研磨されたクラッチカバー
 図2.1はエンジンとの合わせ面を修正研磨したクラッチカバーの様子です.これにより密封度を高め,ミッションオイルが漏れるのを防ぐことが可能になります.

図2.2 修正研磨されたエンジン側クラッチカバー接触部
 図2.2は合わせ面を修正研磨されたエンジン側の様子です.クラッチカバー側と同様に修正されたことにより,より一層ミッションオイルの密封性を高めました.

図2.3 オイル漏れの解消したクラッチカバー
 図2.3は合わせ面に漏れ防止対策を実施してから新品のボルトを使用して規定トルクでクラッチカバーを締め付け,70kmほど試運転を実施してから撮影した様子です.完全に漏れが解消したのを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 RG500/400Γの整備を多数実施していると,クラッチカバーからミッションオイルが漏れ出す事例は少なくありません.それは発売から数十年経過していれば,密封していた材質も経年劣化してきたり,ボルトも振動で緩んできたりする為です.ボルトは締め付け時の変形の復元力がテンションとなりますが,それは永久的ではありません.そしてクラッチカバーからオイル漏れしている場合,同時にエンジン逆側のフライホイールカバーからも漏れていたり,オイルパンから漏れていたり,エンジンのつなぎ目が同様に漏れているケースが多々あります.

 この車両をお預かり修理している際は,2サイクルエンジンオイルがロータリーバルブカバーから漏れていたり,とにかくエンジンが油まみれになっていたので,一度整備してから周囲を洗浄し,何がどこから漏れているのかを確認する作業から入る必要がありました.

 やはり古い車両の整備で大切なのは,何が漏れているのか,そしてどこから漏れているのか,更になぜ漏れているのかといった状況判断できる能力です.人体と違って,機械は漏れを自己修復できません.したがって,人が外部から手を加えて漏れを直す必要があります.今回の漏れの大元はボルトの頭でしたが,そのボルトの付け根のクラッチカバーからもオイルがにじんでいたため,全体を修理しました.もしここでボルトを交換しただけ,あるいは増し締めしただけでは,他のボルトの頭から漏れてきたり,エンジンの合わせ目から漏れてきたりする可能性が非常に高いと言えます.なぜなら,他の部位も,漏れているボルトやその周囲と同程度経年劣化や疲労が発生しているからです.したがって,それらも同時に手を入れないと,何度もかわるがわる別の個所からオイルが漏れ出し,いつまで経っても漏れから解放されない状況が続くおそれがあります.ゆえに特に古いものは,包括的に整備しておくことが求められます.


※1 フィルター下流の燃料パイプの錆によるキャブレータからの燃料漏れについて





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