トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:191~200)


事例:E-191

チョークケーブル外部被覆及び金属巻線の断線によるチョークレバー操作感の悪化について


【整備車両】

 
 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1988年  参考走行距離:約58,000km


【不具合の状態】

 チョークレバーの動きに違和感がありました.


【点検結果】

 この車両はエンジンの始動が不能になったということで,お客様のご依頼によりメガスピードで修理を承ったものです.

結果的にオイルチェックバルブの衰損
※1 が原因でしたが,

ここではその他の点検の際に気になったチョークワイヤについて記載します.



図1.1 ビニールテープで補修されているチョークワイヤ

 チョークワイヤケーブルのアジャスタから先がビニールテープが巻かれた状態でした.

すでに操作に違和感があることから取り外して点検しました.



図1.2 損傷しているケーブル

 図1.2は取り外したチョークワイヤケーブルのテープを剥がした様子です.

テープの下の部分のケーブルが千切れて損傷していたことから,応急処置的にテープで補修していたものと推測されます.



図1.3 破損している金属被覆

 図1.3は図1.2の青い四角で囲んだ部位を拡大した様子です.

ワイヤ本体は無事ですが,最外部のケーブル被覆と内側の金属巻線が切断していました.

この状態ではワイヤの張力を被覆で保持することができずに力が逃げる為,

チョークレバーの引きに対して内部のワイヤが比例して動かない場合があり操作感が著しく悪化します.



図1.3 被覆の破損しているケーブル

 図1.3はアジャスタ部の切断している被覆よりエンジン側で発生していた損傷の様子です.



図1.4 破損した被覆と露出した金属巻線

 図1.4は図1.3の赤い四角で囲んだ部分を拡大した様子です.

アジャスタ接続部付近の被覆の様に,完全に切断するには至っていないものの,

一番外側の被覆がめくれて内部の金属巻線が剥き出しになっていることが分かります.

金属巻線が露出していると,外側からは分からなくても内部に錆が発生している場合があり,

それが内部抵抗となりワイヤの動きを阻害する原因になり,やはりレバーの操作感が著しく悪化します.



【整備内容】

 すでにケーブルそのものが修復不能な状態にあったことや経年劣化も考慮して新品に交換しました.



図2.1 新品のチョークケーブル

 図2.1は新品のチョークケーブルの様子です.

新品はケーブル本体が柔軟性に富んでいるだけでなく,内部に潤滑材が仕込まれている為,

新品のワイヤと相まって非常に動きがスムーズです.

最終的に各部の点検整備を完了し,

取り付けたチョークワイヤケーブルの動作が正常であることを確認して整備を完了しました.



考察】

 この事例ではチョークワイヤケーブルが大きく2か所破損していて,

そのうちアジャスタ側は外部被覆と内部金属巻線の切断という致命的な不具合が発生していました.

ワイヤが内臓されているケーブル類は消耗品であると考えるべきであり,

動きが悪くなれば,それは交換時期であるととらえて良いといえます.


 動きの悪い状態で無理に動かせば,どこかに無理がかかり,ワイヤの受けであるケーブル被覆や金属巻線,

あるいはレバー本体に過大な負荷がかかり,材質的に一番弱い個所から破損してきます.

その結果さらに動きが悪くなる,つまり小さな損傷が引き金となり大きな損傷の原因になるという,

連鎖的・加速度的な破損の様子を呈す部位であることを認識することが大切です.

もちろんチョークワイヤケーブルには樹脂材質の部分も含まれることから,

使用だけでなく経年も考慮して定期的に整備される必要があるといえます.





※1 オイルチェックバルブの衰損により短期間で2サイクルオイルで満たされたフロートチャンバについて






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