事例:137
スタータプランジャバルブゴム部の衰損による空燃比の狂いについて |
【整備車両】
RG250EW-4W (GJ21B) RG250Γ(ガンマ) 推定年式:1986年 参考走行距離:約3,900km |
【不具合の状態】
スタータプランジャバルブのゴム部が変形していて燃料の密封不良が疑われる状態でした. |
【点検結果】
この車両はお客様のご依頼によりメガスピードにて各所分解整備したものです.
長期保管により始動不可の状態に陥っていた為,不具合の原因と推測される,
キャブレータのオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)を実施しました.
今回の事例ではその中のスタータバルブについてとりあげます.
図1.1は取り外したキャブレータの様子です.
パイロットジェットやスタータジェットが詰まっていたり ※1 ,
フロートバルブやニードルジェットホルダに腐敗したガソリンが堆積していました.
図1.2 ゴムバルブの変形しているスタータプランジャ |
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図1.2はバルブゴムの変形しているプランジャの様子です.
変形に加え,ゴムそのものが硬化している為,バルブシートに対する柔軟性が損なわれている状態でした.
これではスタータ経路の燃料を完全に遮断することはできません. |
【整備内容】
バルブゴムが変形していることから,プランジャを新品に交換することになりました.
図2.1は新品のスタータプランジャの様子です.
これは純正部品の設定では単体で供給されていませんが,
シート部が衰損していた場合は,燃料の密封性能が低下して混合気が濃くなる為,必ず新品に交換される必要があります.
オーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)という語句を使用するのであれば,
座面の変形したシートを再使用するという愚かな選択肢はありません.
正規の形状では中心のシャフトが無い設計ですが,
シャフトがあってもほぼ同じ様に機能することを実験により検証している為,
あえて除去する必要性はないと判断することができます.
図2.2はキャブレータボデーを完全に分解し,細部まで点検洗浄している様子です.
発売が1986年頃であることを考えれば,やはり最低限この状態まで分解洗浄する必要があります.
図2.3は不具合箇所をすべて修正し,オーバーホールの完了したキャブレータの様子です.
機能のみならず,外観の美しさも取り戻すことができました. |
【考察】
スタータプランジャのバルブラバーの密封性能が低下している場合,
常にスタータ経路からわずかな燃料がシリンダに供給される為,厳密にいえば空燃比が小さい方向にずれます.
これは吹け上がりを悪くするだけでなく,プラグのかぶりにも影響してくるといえ,可能な限り是正されなければなりません.
RG250Γの場合,GJ21A型もGJ21B型もキャブレータはミクニVM28型を使用しており,
スタータプランジャ単体の部品設定はありません.
したがってメガスピードでは独自に部品を選定し,新品を使用することにより対応しています.
やはり発売が1986年頃ということを考えれば,少なくともゴムは劣化・変形を起こしているのが自然であり,
設計通りの性能を引き出すためには新品に交換されることが必須であるといえます.
※1 “スタータジェット及びパイロットジェットの詰まりによる始動不可について”
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