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事例:E-264

カムシャフトおよびロッカーアームの引っ掻き傷とカム山の減りによる出力減少について

【整備車両】 
 CB250RSA-Ⅱ (MC02)  推定年式:1981年  参考走行距離: ―
【不具合の状態】 
 カムシャフトとロッカーアームの接触部に傷が発生していました.またカム山が減少していました.
【点検結果】 
 この車両はエンジンのつなぎ目からオイル漏れが発生しているということで,エンジンオーバーホールのご依頼を承ったものです.今回の事例ではその際に発見したカムシャフトの不具合について記載します.

図1.1 傷の発生しているカムシャフト
 図1.1 はカムシャフトの様子です.赤色の楕円で囲んだロッカーアームとの接触部に引っ掻き傷の様なものが発生していることが分かります.状態をよく確かめる為に取り外し,カム山の高さを測定すると,参考値より約0.1 mm減少していることが分かりました.これではバルブを開き切れていないだけでなく,遅く開いて早く閉じるという出力減少につながる動きになってしまっていると言えます.つまりカム山が削れて低くなることにより,吸入空気の取り入れ口が狭くなるだけでなく,取り入れる時間も減少するということです.結果としてバルブタイミングが微小変化しエンジンをデチューンしていることになります.
 エンジン出力への影響としては,カム山の減少によるところが大きく,引っ掻き傷はによる影響は無視できる程度であると言えます.しかし通常この様な深い傷は発生しないことから,過去のオイル管理の悪さ等が浮き彫りになりました.もっともお客様はこの車両を中古で手に入れ,メンテナンスを当社で実施していることから,傷はそれ以前に発生していた可能性が高いと言えます.

図1.2 ロッカーアーム側に発生している引っ掻き傷
 図1.2 はロッカーアームのカムシャフトの接触部に発生している傷の様子です.カム側程深くないものの,やはり筋状に傷が発生していて,普通ではない状態でした.


【整備内容】
 カムシャフトを中古良質のものに交換し,ロッカーアームは新品に交換しました.

図2.1 良質の中古カムシャフト
 図2.1は良質の中古カムシャフトの様子です.すでに新品が絶版で入手困難なことから,お客様にインターネットオークション等で入手していただきました.カム山も規定通りあり,状態も良好であることから使用可能と判断しました.

図2.2 良質の中古カムシャフトの取り付けられたヘッド
 図2.2 は良質の中古カムシャフトをエンジンに取り付けた様子です.これにより当時の設計者の意図したバルブリフトとバルブタイミングを再現することが可能になりました.

図2.3 新品の吸気・排気の各ロッカーアーム
 図2.3 は新品のロッカーアームの様子です.すでに国内では正規のルートでは存在しない状況でした.しかしお客様のご尽力により,海外から調達していただき,メガスピードに届けていただきました.

図2.4 ヘッドカバーに取り付けられた新品のロッカーアーム
 図2.4 は新品のロッカーアームをシリンダヘッドカバーに取り付けた様子です.これにより確実なバルブの開閉が期待できます.

図2.5 バルブクリアランスの調整
 図2.5 はバルブクリアランスを測定・調整している様子です.カムシャフトやロッカーアームを交換したこと,バルブの擦り合わせを実施したこと等によりクリアランスがずれた可能性が非常に高い為,改めて見直す必要があります.

図2.6 腰上オーバーホールの完了したエンジン (型式:MC02E)
 図2.6 はいわゆる腰上のオーバーホールを完了したエンジンの様子です.圧縮圧力も1,200kPaと非常に良好であり,実際の試運転においても楽しくライディングすることができました.


【考察】 
 この車両はエンジンのつなぎ目からオイル漏れが発生していた為,オーバーホールを承ったものです.80年代初頭のモデルですが,お客様のご尽力による予備の部品取りエンジンの手配や,海外からの部品調達等のサポートがあり,メガスピードでも安心して分解整備に取り組むことができました.特に受け入れ車両が古い場合,この様なお客様の部品調達のご支援をいただけると非常に助かります.

 今回エンジン分解整備の大きな目的はつなぎ目からのオイル漏れの修理ですが,その他にも不具合が見つかれば,同時に整備を実施したいというご依頼のもとに進めました.開けるまではカムシャフトやロッカーアームがこの様な状態に陥っているとは想像できませんでしたが,なるほどエンジンをオーバーホールしてから乗ったときの調子の良さを考えれば,内部がこの様な状態であったことも頷けます.もっともエンジンを開ける前でもオイル漏れを除けば調子が良かったことには違いありません.更にそれが良くなったと言うことです.

 このモデルに見られるようにシリンダヘッドカバーにロッカーアームが付く設計のエンジンでは,ヘッドカバーがかなり重要な役割を果たし,エンジン性能のキーになる部位であると言えます.それが単なるヘッドのフタでないことは,締め付けボルトの種類や個数からも明らかであり,それゆえ正確に取り付けるには難度が高い部類に属することになります.







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