車検整備の際に発見した極度に劣化したエアフィルタについて |
【不具合の状態】
エアクリーナエレメントが著しく劣化していました |
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図1.1 は点検の為に取り外したエアフィルタの様子です.スポンジ部が指で軽く触れただけでボロボロ崩れる状態でした.これではゴミを濾過するどころかフィルタそのものがゴミとしてエンジンに吸い込まれ兼ねません.
他店で2年前に車検を通していますが,2年でこれ程劣化するものではない為,車検を通す際にこの状態を無視したか,点検しなかった可能性が高いと言えます. |
図1.2 すでに一部がエンジンに吸われたエアフィルタ |
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図1.2 は図1.1 の反対側の様子です.すでに赤円で囲んだ部位はすでにスポンジがなくなっていました.この状態が続けばエンジンの前にキャブレータに悪影響を及ぼすことが懸念されます. |
図1.3 はエアフィルタの状態を触診した様子です.軽く触れただけで崩れる為,もはや手の施しようがない末期の状態でした.もちろん製品としてはダメですが,実際に見ればこのスポンジは,ブランデーが含まれたスポンジケーキの様に美味しそうに見えます. |
図1.4 潰れているエアクリーナボックスとの接続部のスポンジ |
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図1.4 はエアクリーナボックスとエアフィルタが接続する部位ですが,本来あるはずのスポンジが潰れて,あるいはすでになくなっていました.これではエアフィルタを通らない汚染された空気がキャブレータに吸い込まれていたことになります.しかしすでにフィルタそのものがゴミのようになっていたので,どちらにしてもゴミだらけになっていたと考えられます. |
図1.5 ケース下に堆積している崩れたスポンジのカス |
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図1.5 はケースの下に溜まったエアフィルタのカスの様子です.ボロボロ崩れたものが吸い込まれずに堆積していったものであると言えます.見ているだけでも頭がかゆくなってきそうなので,速やかに整備することにしました. |
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【整備内容】
ケース内部を可能な限り清掃洗浄し,エアフィルタは新品に交換しました. |
図2.1 はケース内部を清掃洗浄した様子です.これにより余計なものを吸い込む心配がなくなり,またジメジメして気持ち悪い感じも解消しました. |
図2.2 は純正の新品のエアフィルタの様子です.スポンジも張りがあり簡単には千切れません.色も鮮やかです.これにより外部からのゴミを十分に濾過してくれることが期待できます. |
図2.3 はエアフィルタの内側の様子です.ケースとの接続部にはしっかりO状のスポンジが付いていて,隙間から汚染された空気を吸い込む心配がなくなりました. |
図2.4 は新品のエアフィルタを清掃洗浄したケースに取り付けた様子です. |
図2.5 は整備の完了した吸気系統の様子です.以上の整備により,汚れた空気を濾過する性能を取り戻すことができました. |
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【考察】
バイクはガソリンエンジンですから,ともすると燃料系統だけに目が行きがちです.しかし,実際にはこの事例の様に空気を綺麗にするはずの吸気系統がゴミを生み出しているという本末転倒な状態に陥っているケースが少なくありません.いわばミイラ取りがミイラになっているのです.ゴミ取りがゴミになってはイカンわけです.特にエアフィルタはフタを開けて中を目視確認しない限り分からないので,やはり少なくとも継続検査(車検)の際にはきちんと法定定期点検を実施して,その状態を確認しておくべきであると考えます.
車検は通れば良いというものではありません.通すだけならこのボロボロのフィルタでも通るでしょう.直キャブの様な違法改造でなければ検査官はエアクリーナボックスの中まで確認することはありません.しかし,例えボロボロのフィルタで通したとして,その後2年間この状態で乗りたいと思いますか.おそらく2年後にはフィルタはかなりの部分がエンジンに飲まれているはずです.私だったらそれは嫌です.
メガスピードは陸運局認証工場ですから,継続検査(車検)の際には必ず法定定期点検を実施します.現在の車検証には自動車整備振興会の努力もあって,車検時に認証工場で定期点検を実施しているか否かが記載されるようになりました.検査後に2年間安心して乗っていただく為にも,法定定期点検を実施することは大切です.この事例がそれを良く示しています. |
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