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事例:E-225

振動により折損したエアチャンバ保持ステーについて

【整備車両】 
 R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:約15,200km
【不具合の状態】 
 エアチャンバを保持するステーの取付部2か所のうち、方側が折損していました.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードで整備を承る前に他店でヘッドガスケットおよびピストンリングを交換したとされるものです.当社で点検したところリザーバタンクには全く冷却水が入っておらず,ラジエータにもキャップ口元付近は冷却水が無い状態でした ※1 これではオーバーヒートに陥る危険性があります.その他各部に異常が見られましたが,今回の事例では,エアチャンバ保持ステーの折損について記載します.

図1.1 亀裂の発生しているエアチャンバ取り付けステーの右側ボルト部
 図1.1はインテークエアチャンバを保持する為のステーの様子です.黄色の円で囲んだ部分はサーモスタットに共締めするボルトですが,丁度ボルトの座る位置に亀裂が発生していることが分かります.今回の整備車両は水廻りの点検整備一式を承っていて,その一環としてサーモスタットを交換する為,このボルトを外す必要がありました.

図1.2 断裂しているボルト締め付け部
 図1.2は取り外したステーの様子です.エンジンに取り付けられていた時は亀裂が入っているだけに見えても,実際には取り外してみるとすでに切断されているという部品が少なくありません.このステーも同様でした.これでは残りのもう一方に2つ分の負荷がかかり,そちらも金属疲労で切断するのは時間の問題であると言えます.


【整備内容】
 新品の部品供給があった為,ステーASSYを新品に交換しました.

図2.1 新品のエアチャンバ保持ステー
 図2.1は新品のエアチャンバ保持ステーの様子です.金属がリフレッシュするだけでなく,キャブレータウォータパイプを保持するクランプも美しく蘇りました.

図2.2 エンジンに設置された新品のステー
 図2.2はステーをエンジンに取り付けた様子です.エアチャンバ―保持部はスクリュも新品に交換し,締め付け側と併せて金属疲労の回復を図りました.またクランプが新品になったことにより確実にウォータパイプを保持することができるようになりました.


【考察】 
 2サイクルエンジンの中でも特に並列2気筒は構造上振動が大きい為,エンジンに締め付けられている金属部品は走行距離に応じて疲労切断しているものが少なくありません.この事例ではステーが切れていましたが,その部位はボルト締め付け部であり,やはり固定されている部分が一番疲労すると言えます.
 今回の事例では新品の部品供給があったため,部品をASSYで交換してリフレッシュすることができました.しかしもし絶版であれば,何か同等のものを作らなければなりません.その場合は純正部品を遥かに超えた費用がかかる為,新品の供給があるうちは迷わず交換しておくのが発売から20年以上経過した絶版車を所有する上で非常に大切な事であると言えます.


※1 空になったリザーバタンクとラジエータ内の冷却水不足によるオーバーヒートの危険性について





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